【その終活間違っているかも!?】
第2話 「自宅を所有していると揉めることがあるから、自宅に住みながら売却できるリースバックを利用しようかな」と思っている方

相続・遺言コラム

最近CMなどで自宅に住みながら売却できるリースバックという制度を知ったのだが

現在所有の自宅に住みながら、自宅を売却し、売却した資金を老後生活に自由に使うことができるという夢のような話をCMなどで謳っている会社が最近多くあります。しかも、だれでも聞いたことのある大手の会社が行っているため不信感を抱くことなくご興味いだく方も多いかと思います。

今回は、このリースバックについて具体的に解説したいと思います。ただし、本コラムは、リースバックを否定したり肯定したりするものではありません。相続の実務家である行政書士兼不動産業も経営している宅地建物取引士田巻の立場からあくまで私見として解説したいと思います。

リースバックの仕組みと国からの注意喚起

リースバックは、買主が売主からものを買ったあと、買った方が売った人に貸す(リースする)という一連の契約のことをいいます。

リースバックの対象となるものは不動産に限りませんが、最近、テレビでCMなどをしているのが不動産のリースバックの制度です。リースで戻す(バックする)形態となるため、リースバックと呼ばれています。

魅力的な表現で抽象的にいうと、今住んでいる自宅を信頼できる会社に売却して、その売却資金を老後資金として自由に活用いただき自宅は、賃料を払いそのままずっと我が家として住み続けることができますというものです。

ただし、令和6年11月現在ニュースでも盛んに取り上げられておりますが、リースバックの手法は、消費者センターに数多くの問い合わせがきている社会問題ともなっておりますので注意が必要です。

そのため、CMをする企業も最近のリースバックという言葉の印象が悪くなってきているため、リースバックという言葉を積極的には使わないで「住み慣れた自宅に住みながら老後資金を得る方法がありますのでご相談ください」などと、宣伝をするように変化しております。

リースバックの事例を使った解説

具体例

相談内容

自分は、80歳で後期高齢者になり、持ち家があると何かと相続の際に揉めることがあると聞いた長男と二男は、昔からあまり仲がよいとはいえず、相続の際に、不動産は分けられないから売却した方がよいとかも聞く。ただ、自分としては、住み慣れた我が家にいたい気持ちもあり老後の資金も得たい気持ちも少なからずある。そのため、テレビCMで見たリースバックというものに興味を持った。どのようにすればよいだろうか。

いまのところ年金生活で夫婦の生活はできているが、孫(二男の子)の教育資金にも必要なとき協力したいし、夫婦で国内旅行もしたいのでもう少し現金は多く残しておきたい。

図で相談者である夫所有の自宅は、札幌市中央区円山地域で、固定資産税評価額が土地3000万円、建物評価額1000万円で、不動産会社に査定してもらうと立地が良く建物の状態も良いからとして4500万円~5000万円の仲介売出価格の査定を受けた。

この前提とすると仮に、市場で売却した場合には、4500万円から5000万円で売却ができそうとなります

リースバックで売却した場合のお金の流れ

売却予想価格3000万円
仲介手数料▲96万円(売買価格の3%+6万円)
税理士費用▲10万円
不動産譲渡所得税▲0円(税理士に依頼し居住用不動産の譲渡の特例を利用した場合)
手許に残る額推定2890万円

生活した後に支出するもの予想5年間

賃料及び管理料▲900万円(賃料1か月15万円×12×5年分)
保証会社への保証料▲20万円(5年間で支払う予想)
修繕費▲100万円(給湯器故障や外壁、水道などの修繕費)
▲1020万円

手許に残る額推定

2890万円 - 生活した後に支出するもの予想5年間1020万1874万円

リースバック提案会社によって異なるが、現実はかなり手残りが少ない

上記のように、不動産会社から提案された、リースバックの仕組みに乗っかり売却をすると5年後には、売却せずに4500万円~5000万円で売却できた不動産が、半額以下の1874万円程度の現金に代わることとなります

ただし、時間は戻せず、健康に限りはありますので、足の元気なうちに80歳代前半で旅行をしたり、かわいい孫に贈与するというのもよいと思いますので、リースバックの制度をしっかり理解した上で契約するのも選択肢の一つとしてはありといえます

リースバックの仕組みは、一見すると夢のような制度ですが、基本的に不動産会社が絶対損をしないような仕組みづくりをしております。そのため、売却額も当然相場より大きく下がりますし、売却後も不動産会社側が利益を得続けるような仕組みがされております。これは、特に悪いことではなく、不動産会社からすると営利法人である以上利益を組み込むこと自体は当然の話です。

リースバックの提案を不動産会社から受けたなら、まず信頼のおける親族や中立的に判断をしてくれる専門家に相談をし、リースバックのメリットもデメリットも十分承知したうえで契約をすべきでしょう

また、通常、賃貸の場合、修繕は買い受けた側(新所有者)がすべきものですが、リースバックの場合、多くのケースで、修繕は、特約により賃借人が負います

また、売却した後、貸主となった会社が他社へ転売するリスクもあります。転売すると転売を受けた他社から賃料の増額を要求されるリスクも上がります

このようにリースバックは、一般の消費者からするとリスク予想の非常にしにくい制度となっております。

揉めそうという場合の解決策3つ

ここからはリースバック以外の方法があることについて、解説してみます。まず、不動産を所有していると相続発生時に揉めそうとのことであれば、

という方法があります。

① 通常通り売却して、高齢者介護付き賃貸施設に入居する

これは、北海道では多くの方が行う方法です。高齢者になると一軒家を維持管理することが困難となりますので、まずは、高齢者介護付き賃貸施設を探し、その後、自宅の売却をするという方法です。特に、北海道では除雪の問題があり、後期高齢者の年齢となると自宅の除雪や冬の買い物で苦労なさることも多いです。高齢者介護付き賃貸施設であれば、介護や食事、買い物で苦労することはないため、北海道では高齢者の快適な暮らしの王道ともいえるかもしれません。

② 公正証書遺言を作成して、自宅を誰に相続してもらうか指定する

揉めると遺産分割がまとまらず、遺産分割がまとまらない場合、不動産も預貯金も死亡した方の名義のままとなります。そのため、相続人同士が歩み寄れないなどが想定される場合には、自宅不動産や預貯金すべてについての死後の行方(遺贈先)を決める公正証書遺言を作成し、遺言執行者も指定するという方法があります。

公正証書遺言を作成しておけば、遺産分割協議をしなくても公正証書内で指定された遺言執行者によって、不動産の名義変更、預貯金の解約手続きをすることができますので、相続発生後揉めた場合の根本的解決策となります。

③ 相続時精算課税制度を利用して、子供にあらかじめ自宅を生前贈与する

上記①や②の方法もとりたくないという場合には、生前贈与をして所有不動産をなくしておくという方法もあります。この制度は、相続税の節税対策になるわけではありませんが、贈与税の免税、節税効果や、スムーズな相続手続き対策としての効果があります。十分他の手段も検討して、相続時精算課税制度を利用して生前贈与というのも選択肢の一つとして有効であると思います。

まとめ

今回は、いま話題となりつつあるリースバックの制度について解説しましたが、相続関係でお困りの方は、置かれている状況は様々です。

終活相談は、相続や遺言、不動産の実務経験がないと的確なアドバイスをすることが困難な分野です。本やネットであふれる机上の空論では解決は難しいといえます。

例えば、不動産を売る専門の方に相談をしたら不動産を売るのが最適とアドバイスを受けますし、保険の方に相談すれば、保険をお勧めされます。相談者する相手によって、発言が変わりますので、できるだけ中立的にものを言える立場の方に終活相談をするのがよいでしょう

たまき行政書士事務所では、行政書士兼宅地建物取引士である、田巻が直接お客様の事情をお聞きし、遺言や税、不動産実務、相続手続きの観点から中立的にアドバイスをすることが可能です

たまき行政書士事務所では、ご希望の方に相続や遺言、不動産、終活のご相談を無料で行っております。一度、実務家の観点からアドバイスしてほしいという方がおりましたら、お電話メールラインにてお気軽にお問合せください。

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