夫の相続発生後、妻が住み慣れた家に生涯安心して住み続ける方法について
相続・遺言コラムよくある事案
令和の時代において、日本では男女平等であることが当然の認識ですが、住居については、北海道内ではおそらく9割以上の確率で、男性が自宅土地建物の所有者となっています。
よくある事案として、夫、妻、長男、長女、二男という家族構成で、自宅の所有権を持つ夫が死亡して、妻ら法定相続人の方からご相談を受けるケースがあります。
おそらく、今後の生活(住居の確保や生活資金の確保)を最も保護されるべき方は、社会通念上、残された妻になると思います。
民法という法律でも、この社会通念を反映し、様々な条文で妻(配偶者)の保護を図っています。
例えば、法定相続分が2分の1と規定されていること(上記の家族構成だと、子供3人の法定相続分は6分の1)、配偶者居住権の制度の新設などです。
また、少なくとも子供より20歳程度は年上であることから、就労能力の低下(夫の相続が発生する頃には妻は75歳以上であることが多い)のこともあり、私見ではありますが、今後、年金だけでも十分生活できるくらいの保護を与える必要があるといえるでしょう。
夫の相続発生後、妻が安心して自宅に住み続ける方法の代表例3つ
1つ目の方法:妻への所有権の移転
従来から行われている方法として、相続発生後、自宅の所有権を亡き夫から妻へ移転する相続登記があります。
つまり、遺産分割協議により、死亡した夫が所有していた自宅不動産を妻が単独で相続するということです。
夫の相続発生後、自宅の所有権を妻に移転しておけば、少なくとも他者から退去を迫られることはありませんし、足腰などの健康状態が悪化した場合には、自由なタイミングで自宅を売却して、介護付きマンションなどに引っ越すことも可能です。
2つ目の方法:配偶者居住権の設定
所有権を移転しなくても、妻が、亡き夫と共に暮らしていた自宅を終の住処とすることができる法律が新設されました。それが、配偶者居住権の設定というものです。
配偶者居住権を簡単に説明すると、自宅の所有権は配偶者以外の法定相続人(今回の事例だと長男、長女、二男)に移転し、配偶者居住権という居住の権利のみを妻が取得するというものです。
配偶者居住権は、国が想定したモデルケース(前橋地方法務局作成PDF)も重要ですが、それよりも配偶者である妻の気持ちをかなえるための方法として使うことが大事であると思います。
配偶者居住権のモデルケースは、もっぱら東京都など関東圏の土地の高い地域を想定していて、法定相続分で分けるということを想定しています。
しかし、配偶者居住権の制度は、モデルケースのように相続人全員の財産的な権利を確保する目的だけでなく、もっと柔軟に使うことができます。特に、北海道では土地の価格が関東圏より低いケースが多いため、モデルケースのような事例は稀だといえます。
北海道で配偶者居住権を設定するケースとしては、夫と長年過ごした自宅には住み続けたいけれども、近くに住む長男夫婦を全面的に信頼して介護も頼んでいるので、自宅の所有権は長男に移転したいと希望するケースなどが挙げられます。
所有権を長男に移転すると、将来、万が一長男夫婦と仲が悪くなってしまった場合に、外形的には、長男が母親(被相続人から見ると妻)の住んでいる自宅を売却してしまうリスクがあります。
しかし、配偶者居住権を設定すれば、妻の居住の権利は一生涯確保しつつ、自宅の所有権は長男に移転できるので問題が解決します。
(配偶者居住権)
民法
第千二十八条 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
(以下略)
(配偶者居住権の存続期間)
第千三十条 配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。
3つ目の方法:リースバック
夫の相続発生後、妻が安心して夫婦で住み慣れた家に暮らすためには、家に住むことができる権利と、もう一つ、金銭的余裕が必要となります。
例えば、一軒家に住んでいると、毎年の義務である固定資産税の支払い、古くなった建物の修繕費、下水道代、冷暖房代、大雪による除雪業者への依頼費など様々な固定費や変動費がかかります。
そのため、年金額が少なく、夫の預金もあまり相続できないようなケースでは、条件があえば“リースバック”という方法により、住み慣れた住居の居住権の確保と、まとまった金銭を取得することができます。
リースバックとは、最近、不動産業者であるHOUSEDO(ハウスドゥ)さんのCMやチラシ(“ハウス・リースバック”という商品名)で普及している手法ですが、簡単に説明すると、不動産業者が、一度、妻が相続した自宅不動産を買い取り、同時に、リースする(賃貸契約を結ぶ)というものです。
この手法だと、一度、不動産業者が家を買い取る(不動産会社が所有権を取得する)ので、被相続人の妻の側からみると家を売却してまとまったお金が入ることになります。それとほぼ同時に、売った自宅の居住について、賃貸契約を結ぶことにより、貸主=不動産業者、借主=家を一度相続した妻ということになります。
どの制度にもメリットデメリットはありますが、私見としては、内容を十分理解した上で行うのであればリースバックの制度を利用することはよいと思います。
まとめ
故人の財産の中に不動産(特に自宅土地建物)があるときは、遺産分割協議の際、慎重に判断する必要があります。
今回は、夫が死亡し、妻が住み慣れた家に生涯安心して住み続ける方法を中心にコラムとして解説してみましたが、実際には、もっと個別具体的に深く検討しなければならないことが多いです。
相続手続きは難しいもので、相続人同士の感情問題や、過去の経緯などは様々なので、同じ事情の相続というのは1つもありません。
相続にお困りの際には、相続に詳しい専門家へ相談してみるのも良いと思います。
もちろん、たまき行政書士事務所でも特に、北海道内の相続の相談について初回無料で行っております。
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