【遺言を作成した方が良い方】第15話
養子縁組をしている方〔養親になった方向け〕
相続・遺言コラム
養子縁組とは、かなりかみ砕いて説明すると年上の方と年下の方が法律上の親子となることをいいます。養子縁組の時点から子供が生まれたようなイメージと考えるとわかりやすいでしょう。
養子縁組には、大きく分けて普通養子縁組と特別養子縁組がありますが、相続で問題となるのはほとんどが普通養子縁組ですので、今回のコラムでは、普通養子縁組をした養親を想定して解説します。
養親になる2つの典型例
養親となるきっかけ(典型例)は主に2つ考えられます。
- 1. 連れ子との養子縁組
- 2. 事業承継目的の養子縁組
1. 連れ子との養子縁組
1つ目は、妻の連れ子(妻と前夫との間の子)と妻の再婚相手の男性が結婚と同時に養子縁組をするケースです(連れ子との養子縁組)。
妻からすると2回目以降の夫となる方には、連れ子(特に未成年の場合)との養子縁組を求めます。なぜなら、養子縁組をしない場合、法律上の父とはなれず、妻の連れ子と夫(妻から見ると後夫)が本当の意味での家族とはなりにくいからです。
そのため、再婚相手の夫は、対外的に妻の連れ子の父親と名乗るためにも、家庭内でも血縁の父と同様となるためにもほとんどのケースで養子縁組をします。
2. 事業承継目的の養子縁組
2つ目の典型例は、妻の父が事業を経営していてその後継ぎとして、妻の夫が妻の父と養子縁組をするケースです(事業承継目的の養子縁組)。
これは、妻の父が死亡した場合に、養子となった妻の夫が、民法上、法定相続人となることを目的としております。
法定相続人となると、相続という形で自社株を直接相続できることや、相続税の軽減にもつながるため技巧的に養子縁組を行うものです。
養親となった方がすべきこと=遺言(特に公正証書遺言)を作成すること
養子縁組をすると、その時点ではそれほど問題とならなくても、何十年も先に起こる養親の相続(死亡発生)の際に、法定相続人に大変な思いをさせることがあります。
1つ目の典型例(妻の連れ子と養子縁組)
1つ目の典型例である妻の連れ子と養子縁組をした養親(男性)のケースでは、遺言を作成した方が良い場面が二つあります。
1. 夫にも前妻との間の子供がいるケース
夫に、前妻との間の子がいた場合、夫に相続が発生すると、後妻と、前妻との間の子、養子縁組をした養子が相続人となります。
このような関係になると、後妻が前妻との間の子に連絡をし、後妻が、前妻との間の子と、自身の連れ子と3人で遺産分割協議をしなければならないという、大変な状況となります。
そのため、養親となった夫としては、後妻や養子となった方のためにも、前妻との間の子のためにも、しっかりと生前に公正証書遺言を作成し、遺産分割協議をしないで済むようにすべきと考えます。
2. 養子縁組をしたが、妻と離婚したケース
次に、連れ子のいる妻と結婚して、妻の連れ子と養子縁組をしたが、その後、離婚して養子縁組だけ解消しておらず残存している場合が考えられます。
養子縁組の残存(消し忘れ)の理由は、個別具体的な事情があり一概にいえないですが、手続きが大変であったり、養子となった者の心情(大人の事情で親が増えたり減ったりすることで子供が傷つくことを避ける)を配慮しているのかもしれません。
養親(男性)が比較的若年層の場合、別の女性と再婚してその女性との間の子供を持つ可能性があります。
そのような場合、養親となった男性(図でいうと夫)が死亡した場合、後妻、後妻との間の子、養子(前妻の連れ子)が法定相続人となり、遺言を作成していない場合3名で遺産分割協議をしなければならないという事態となります。
1のケースと同様に後妻、後妻との間の子、養子の方にいやな思いをさせないために、公正証書遺言を作成して遺産分割協議をしないで済むようにしておいた方が良いでしょう。
参考記事
2つ目の典型例(事業承継目的で養子縁組をしたケース)
事業承継のため、娘(例えば、長女)の夫と養子縁組をした養親がすべきことは、やはり公正証書遺言を作成することです。
例えば、長女1人の場合にはそれほど問題とならないのですが、図のように、長女の他に長男や二女がいた場合には、養子となった長女の夫と、長女(夫の妻)、長男、二女は兄弟姉妹の関係となり、遺言を作成していない場合、遺産分割協議をしなければなりません。
特に、事業承継目的のための養子縁組の場合には、多くの場合、自社株式の相続が発生しますので、遺産分割の話し合いが難しくなることがよくあります。
そのため、事業承継目的の養子縁組については、養子縁組をしたあとすみやかに公正証書遺言を作成した方がよいでしょう。
公正証書遺言を作成することによって、よりスムーズな事業承継が可能となります。
遺言を作成するなら公正証書遺言
典型例1、典型例2いずれにおいても、遺言を作成するなら、手続きの確実性と遺言の効力の強化のためにも、公正証書遺言をお勧めします。
細かな違いについては、参考記事で解説しておりますのでご参照いただきたいのですが、公正証書遺言は、
- 作成要件が厳しい(証人二人、利害関係者は作成時に関与できない、公証人が必ず関与)ため、無効主張がされにくい
- 家庭裁判所への検認が不要
- 少なくとも専門家が1人以上(公証人及び行政書士、弁護士など)関与するため内容の不備が生じにくい
という3点が長所として挙げられます。
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