日本テレビ系列ドラマ‘‘相続探偵’’第3話を相続実務家の観点から解説します。遺言書の廃棄、死者への遺贈、ネコへの遺贈、相続人以外への遺贈について

相続・遺言コラム

相続探偵とは

行政書士 田巻 裕康

日本テレビ系列によるテレビドラマで、令和7年1月から放送されております。クセが強いが頭が切れる元弁護士が相続専門の探偵として、相続にまつわる様々な事件を解決するというお話(相続ミステリー)です。

今回の第3話は、殺人などもなくミステリーというものではなかったですが、マリーアントワネットへの遺贈という面白い題材でした。

相続探偵3話、マリーアントワネットの相続

相続探偵第3話は、唯一の相続人である一人息子がいるにもかかわらず、すべての財産をマリーアントワネット様に遺贈するという自筆証書遺言を残したというものです。

唯一の相続人(一人相続人)の場合、通常は遺言を残す必要はないのですが、唯一の相続人以外に財産を渡したい場合には、遺言が必要となります

今回の遺言者(遺言を書いていた方)はかつて妻がいたのですがその方とは死別しており、当時中学生だった一人息子に再婚をしようと思うといったところ、反対されたため、結局再婚はしなかったという事情がありました。その再婚をしようとしていた方(ハーフの方)が、マリーアントワネットという本名だったという結論でした。

最初、マリーアントワネットは、歴史上の人物の話となり、その後、飼っていたネコの名前が偶然にもマリーアントワネットという名前だったのでネコに遺贈しようとしたのかとなり、最後は、再婚しようとしていた婚約者がマリーアントワネットという本名だったとの流れでした。

遺言の廃棄

 

最初、自筆証書遺言が発見されたとき、唯一の相続人である息子さんが、ふざけた遺言だとして遺言をゴミ箱に廃棄しようとしました。そこで、相続探偵が、遺言を破棄することは、刑法259条に該当し刑罰の対象となりますよと警告します。

遺言によって不利益を受ける方にとっては、遺言をなかったことにしたいと思うことが実際にありますが、遺言は財産の所有者である方の大切なメッセージなので、基本的には、その通りにかなえる必要があります

遺言の破棄は基本的にダメですが、遺言に従わなくてもよいとされる例外はあります。例えば、受遺者(遺言によって財産を受け取ることになる方)、法定相続人、遺言執行者(指定されていれば)全員が遺言に従うのではなく、遺産分割協議により相続手続きを行いたいという希望がある場合です

今回のドラマの設定では、相続探偵の指摘に、唯一の相続人である息子さんがすぐに応じて廃棄することをやめたため、それ以上の問題には特になりませんでした。

(私用文書等毀棄)
第二百五十九条 権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、五年以下の懲役に処する。

刑法

死者への遺贈

マリーアントワネットは、歴史上の人物であり、このマリーアントワネットをさしていれば、死者への遺贈を希望していることになるので、遺言は(判例上)無効となります。

そして、遺贈するとした死者の相続人への遺贈という解釈にもならないというのが判例上固まった見解のため、もし、歴史上の人物であるマリーアントワネットの相続人が現在いたとしても、この自筆証書遺言は無効となります。

動物(ネコ)への遺贈

次にネコへの遺贈が問題となりました。マリーアントワネットとされるものが、遺言者が飼っていたネコをさしていた場合、そもそもネコへの遺贈ができるのかが問題となります。

ネコへ直接お金や不動産を遺贈することは当然できないというのは誰でもわかります(ネコは法律上は「物」と扱われます)が、これを広げてネコを飼育してくれる人への遺贈(負担付遺贈などの解釈)をできないかが議論となりました。

ドラマでは、結論はでませんでしたが、飼育してくれる人の指定もないためできない可能性が高いというニュアンスで描かれておりました。個人的には、ネコを今後飼ってくれる方への遺贈という解釈は難しいと思いました。

マリーアントワネットという本名の方への遺贈

最終的には、実は、昔再婚をしようとしていた本名がマリーアントワネットという女性ということが相続探偵の活動によってわかりましたので、法定相続人以外の人への遺贈とのことで解釈が固まり、唯一の相続人である息子さんも遺言の執行に同意したため、ドラマの設定ではありますが、この自筆証書遺言で最終的に手続きはできると思われます

まとめ

相続探偵第3話も第1話、第2話と同様に自筆証書遺言がメインの内容でした。一見、同じような話が続くとも思いますが、例えば、相続の実務を勉強しようとしている行政書士、司法書士の方や行政書士、司法書士受験生などにも見てもらいたいとても勉強となる内容でした。

ドラマを見続けていくと相続や遺言で問題となりそうなことが体系的に理解できます。これは試験勉強などではなかなかイメージしにくいものです。試験勉強では、人間の感情的なところは把握しづらいのですが、実際の相続の実務では法律云々よりも人の感情の変化に注力して業務をしていく必要があります

相続というマニアックな分野に特化しているこの相続探偵というドラマは家族法の法律を勉強している方にとって貴重なドラマではないかと思いました。

相続専門のたまき行政書士事務所では、また、第4話以降も簡単な解説コラムを作成したいと思います。

ちなみに、今回も自筆証書遺言であったから壮大なドラマになったのですが、公正証書遺言を作成しておけばあのようなこと(解釈が分かれるような内容になる、遺言執行者の指定の記載漏れ)が生じる可能性は低いです。遺言を作成するなら公正証書遺言一択といえるでしょう。

公正証書遺言は、費用(公証役場の費用と専門家に依頼するときの報酬)が約20万円~30万円ほどかかることが一般的ですが、自筆証書遺言のように裁判で争われるケースは非常に少なくなり、銀行の預金解約も非常にスムーズにいきます

札幌市内や北海道内で公正証書遺言の作成のご相談をしたいとのことであれば、たまき行政書士事務所(札幌市北区)にご連絡くださいますと短時間で半永久利用が可能な公正証書遺言が作成できます。当事務所では年間を通して公正証書遺言の作成サポートを行っております。お体が不自由な方は、自宅や施設での公正証書遺言の作成もできます。

無料訪問相談・無料テレビ電話相談のご予約や、ご質問等はお気軽に

たまき行政書士事務所の無料訪問相談について >>

無料訪問相談のご予約はこちらから お気軽にご連絡ください

遺言・相続コラム その他の記事

全ての質問を見る

たまき行政書士事務所の
ごあんないABOUT

札幌 相続のたまき行政書士事務所 入口
札幌 相続のたまき行政書士事務所 エントランス
札幌 相続のたまき行政書士事務所 相談室
札幌 相続のたまき行政書士事務所 訪問相談
相続・遺言でお悩みの方へ、行政書士が道内全域へ出張対応いたします
札幌など北海道内全域に出張します

相続・遺言専門のたまき行政書士事務所

  • 代表 行政書士 田巻裕康
  • [住所]
    北海道札幌市北区北32条西5丁目3-28
    SAKURA-N32 1F
    011-214-0467
    070-4308-1398(行政書士直通電話)
    電話受付:平日9時~18時
  • [交通アクセス]
    地下鉄南北線:北34条駅(3番出口)から徒歩1分

事務所情報を詳しく見る

料金について詳しく見る

よくある質問と回答を見る

相続遺言YouTube教室 随時更新中!

行政書士田巻裕康による相続・遺言に関する解説動画をYouTubeにて公開中。一般のお客様はもちろん、相続実務を行ったことのない行政書士の方もぜひご活用ください。