相続した実家(空き家となった一軒家)をどうすれば良いのか多角的に解説します

相続・遺言コラム

実家の相続手続き(相続登記)は必須

前提として、まずは、親が死亡したときには、子供に相続手続き(相続登記)をして、生きている方へ名義変更をする必要があります

基本的に、名義変更をしないと実家の管理や利用をしばらくすることはできても、処分(売却、贈与、解体など)することができません

売却しようと思っても、相続登記が未了であるとだれが所有者となるのかがはっきりしないため、少なくとも遺産分割協議書作成までは、不動産屋さんに売買の仲介を依頼することも難しいでしょう。

そのため、相続した実家(空き家)をどうすれば良いかですが、前提としてまずは、相続登記をする必要があります

実家を相続した後の処理について

実家を相続した後の処理については、選択肢は大きく5つあると思います。

一言でいえば、個別事情(実家のある地域、建物の構造、築年数、ハウスメーカーか地場の工務店で建てたか、土地の広さ、接道状況、雪の問題)があり、ケースバイケースである、といえますが、①から⑤について、それぞれ、メリットやデメリットがありますので、①から⑤まで順に解説し、最後に北海道の地方都市での実家の処理についての、最善策は何かを提示したいと思います。

①から⑤のメリット・デメリット

① 誰かに貸す(賃貸に出す)

メリット

賃貸に出すメリットは、

  • 他人が生活することにより、空き家にするよりも管理がなされて家の劣化を防ぐことができる
  • 定期的に賃料が入る

ことです。

例えば、北海道でいえば、

  • 複数のペットと暮らしたいので古くてもいいから一軒家に住みたい
  • そのうち家を買いたいが子供の声などを気にしなくてよいように数年間は、一軒家を借りたい
  • 個人事業(ネット通販業、リモートワーク、整体店舗、ネイルサロンなど)の拠点としても使いたいので、部屋数が多い一軒家に住みたい

などという需要があります。

デメリット

これに対し、貸した時のデメリットとしては、賃借人の要求にこたえなければならず、賃貸人としての責任を負うということです。

具体的には、

  • 通常使用をしていたのにトイレが壊れた
  • 雨漏りした
  • ストーブの調子が悪い

ということになったら賃貸人が交換や修繕をする必要があります。場合によっては、賃料より修繕費用が上回ることや、賃借人の頻度の高い要求に対し、精神的に負担(ストレス)になることがあります

特に相続した実家は、ある程度年数が経過していることが多く、修繕は頻繁に発生する可能性がありますので、実家の劣化が激しい場合には、賃借人を入れる前に多額の費用をかけてリフォームをする必要が出る場合もあります。

② 解体して更地にする

メリット

解体して更地にするメリットは、

  • 周辺のご自宅に迷惑が掛からない
  • 維持管理が楽

ということです。

具体的には、更地にしても雑草はどんどん生えてきますが、雑草を刈る、除草剤を撒くというくらいで維持管理ができます。特に、北海道の場合、建物がある状態の場合、落雪で周囲に迷惑がかかることがありますので、更地の方が周辺への雪害は少ないといえます。

デメリット

解体して更地にするデメリットは、

  • 解体費用がかかる
  • 解体すると固定資産税の軽減が受けられなくなる

ことです。これから法制度が変わって空き家であると、基本的に特例の軽減が受けられなくなる可能性がありますが、現在の法令(令和6年7月時点)のもとでは、しばらくは、親の住んでいた、壊れていない家があれば、住宅用地に対する課税標準の特例というもので固定資産税の軽減を受けることができます。

③ しばらくそのままにしておく

親とともに過ごした思い出の場所としてしばらく家具なども置いたまま、そのままにしておく、使い道が決まらないから現状維持をしておくなど様々な事情がありますが、例えば、1年程度であればそのままにしておくということでも特に問題がないかもしれません

メリット

メリットとしては、

  • 短期間であれば、維持にお金がかからない
  • 思い出として残すことができる

というところです。

デメリット

他方、そのままにしておくデメリットは、

  • 長期間そのままにしておくと、どんどん建物が傷んでいく

ということです。

長期間そのままにしておくと、動物や害虫が隙間から入り込んだり、ガラスが割れたり、建物内部の空気が循環しないことでカビが増殖したり、水道管が壊れたりといったことで、建物が日に日に急速に劣化していきます

また、北海道でいえば、建物の屋根に溜まった雪、落雪の雪などで、除雪をしないと周辺に迷惑がかかることがあります

④ 解体して更地にして売りに出す

ひと昔前(バブル経済期まで)の常識としては、売りに出すなら解体して更地にして土地を売るというのが主流であったかもしれません。

しかし、北海道の地方都市あるいは、札幌市の郊外(地下鉄圏外)においては、解体して更地にして売ると売れ残る可能性が高くなります

メリット

解体して更地にして売り出すメリットは、北海道でいえば、

  • 札幌市営地下鉄圏内など需要のある地域の場合には、土地が高く売れやすい

という点です。たまき行政書士事務所は、不動産業の‘‘さくはな不動産’’を併設しておりますが、例えば、札幌でいえば、市営地下鉄のエリア内でかつ、地下鉄やJRの駅徒歩10分程度の165㎡以上の土地の場合、住宅地で更地であればすぐに高い金額で売れると思います。常に、札幌市営地下鉄圏内では、他の不動産業者からも土地(更地)の買い取りの募集があります。

土地が更地であると、購入者としては、予定通り建物を建てるスケジュールが組めるので、買う側としても魅力的です。

住宅利用の需要の高い地域については、解体し、更地として土地を売ることはよい方法といえるでしょう

デメリット

デメリットとしては、

  • 建物の解体費がかかる
  • 周辺が空き家だらけの住宅地域においては、更地にすると売れ残りリスクがさらに高まる

という点です。

売れ残ると、解体費だけがかかった状態となり、いつまでも解体費の回収ができません

近年では、有名なハウスメーカーで一軒家を建てると資材費、人件費高騰の関係で3000万円くらいになってしまうことも珍しくありません。

そのため、ここ数年の傾向としては、新築で建てるための住宅用地の需要が地域により低くなっております

「解体せず、家があれば、売れたのに・・・」という状況も散見されます

⑤ 古家付き土地として売買に出す

最後に、古家(ふるいえ、ふるや)付き土地として売買に出すという方法を解説します。古家というのは特に定義はないのですが、一般的に築30年以上の家と考えてよいでしょう。相続で発生する空き家は、築30年以上がほとんどですので、ほぼ古家といえるでしょう。

メリット

メリットとしては、

  • 売る前の先行費用がほとんど掛からない
  • 建築費が全体として高騰している現在では、次の買主がリフォームして利用、リフォームして売る、リノベーションしてほぼ新築同様にして売ることにより、古家に価値が出ることがある

ということです。

① 誰かに貸す(賃貸に出す)でも解説しましたが、一軒家は、ペットを複数飼いたい方や子供のいる方、個人事業を営んでいる方に需要があります。

古家自体には、価値は付きにくいですが、古家付き土地として売ると金額の多少はありますが、売れる可能性が高まります

デメリット

デメリットとしては、古家付き土地として売買に出したけれど、長期間売れなかった場合には、

  • 建物が劣化し、周辺に迷惑がかかる可能性がある
  • 北海道だと雪のシーズンは除雪が大変

というところです。

仲介の依頼先(不動産屋さん)を間違うと数年そのままの状態が続き、最終的には劣化した建物を解体せざるを得なくなります

北海道の地方都市では結局①から⑤のうちどのようにするのが適切か

結論からいうと、私見としては、⑤の古家付き土地として売買に出すというのが適切であることが多いと思います。ただし、仲介をお願いする不動産屋さんを吟味する必要があります。

北海道の地方都市といってもさまざまですが、今回は、札幌市中心部ではなく、江別市や苫小牧市、小樽市など人口が十数万人程度の都市を想定して解説します

北海道の地方都市は、ほぼすべての地域で人口減のため土地の供給過多になっている

北海道の地方都市は、土地や古家付き土地の売却額が50万円~300万円くらいになることも多いです。関東の方からすると土地が300万円以下と聞くと信じられないと感じるでしょう。

土地価格は、地域によりますが、実際に取引される額としては、北海道の地方都市の場合、一坪2万円~4万円程度と考えるとよいでしょう。そうすると、60坪(約198㎡)の土地だと、120万円~240万円となります。

そのため、例えば200万円かけて解体して更地として売り出しても売値―解体費でマイナスとなることがあります

さらに、売買が成立すると仲介手数料もかかりますので、マイナスはさらに増えます。

そのため、北海道の地方都市の場合、札幌市営地下鉄圏内のように土地が高値で売れて、確実に収支がプラスになるというものではないので、解体し更地として売却するのは、解体費が高騰していることもあり得策でないといえます

また、建築費も増大しているため、新築住宅用地としても需要が低くなっています。

建物があれば古くても活用できる可能性あり

更地ではなく、古くても建物がある場合、例えば、フルリフォームやリノベーションをすれば新築の半額以下で新築同様のレベルまできれいにすることができます

例えば、30代の夫婦が新築を購入しようとすると、土地と新築建物を建てるのに一般的に頭金を除いても3500万円くらいのローンを組む必要があります。しかし、実際に、住宅ローンの申請をしてみると夫の収入だけではなかなか住宅ローンを組めない場合が多いです

そのため、妻も住宅ローンを組みペアローンを組むというかなり負担がかかる返済方法を採用する必要があることがやってみるとわかります。

住宅はローンを組むことがゴールではなく、余裕をもって毎月返済できることが重要なので、新築ではなく中古を求める傾向が近年増加傾向にあります。

前置きが長くなりましたが、このように近年では、30代くらいの若い世代にも中古を検討する方が多くなってきております

そのため、不動産業者は、中古住宅市場への参入が多くなっております。相続した空き家において考えると、古家でも建物があった方が、古家付き土地、家の状態が良ければ中古建物+土地として売れる可能性が高くなります。

金額は安くはなりますが、古家付きで土地を売却する方がマイナスにはならない可能性が高くなりますし、売れ残るリスクは非常に低くなります

例外としては、

  • 巨大な倉庫がある
  • 土地が広すぎる
  • 頑丈なコンクリートの車庫がある
  • 形が個性的すぎる家

など一般的でない仕様の住宅だと売れるまでに長期間かかることもあるので、場合によっては、先行資金を投じて売れやすく加工する必要もあります。

まとめ

行政書士 田巻 裕康

今回は、北海道の地方都市にある空き家となった実家の処理ついての一般論を解説しましたが、不動産はすべて一点もの(どれ一つ同じものはない)なので、個別具体的にご相談した方がよいと思います

札幌市北区にある相続専門のたまき行政書士事務所でもご相談を行っておりますので、ご相談先に迷ったら一度お問い合わせをいただければと思います。

たまき行政書士事務所は、事務所に宅建業の‘‘さくはな不動産’’を併設しておりますので、不動産屋さんの観点からもご説明できます

まずは、お気軽にお問い合わせください。

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