被相続人が死亡した後、いつどのタイミングで銀行に死亡の連絡をいれるのがよいか
相続・遺言コラム結論としては、銀行等への死亡の事実の連絡は、相続手続きに必要な戸籍収集が完了したあたりで行うのがよいと思います。
ただし、例えば
- 会社の社長が死亡した
- 銀行に個人や会社で借入をしている
といった場合には、すぐに取引先の銀行に死亡の連絡をする必要があります。
それでは、被相続人の死亡後に銀行等へ連絡するタイミングについて相続の専門家が解説します。
銀行等(信金、信組、JAバンク)に死亡の連絡を入れたらどうなるか
まずは、いつ死亡の連絡を入れるのがよいかという問いに答える前に、銀行等に死亡の連絡を入れるとどうなるかについて解説します。
銀行等に口座名義人(被相続人)死亡の連絡をいれると、被相続人の氏名、生年月日、いつ死亡したのかを聞かれます。そして、わかる範囲で保有している通帳の情報(支店名、口座番号)を聞かれ、窓口の方あるいは電話を受けた方から、「いまから口座を凍結するので、入出金ができなくなります」と言われて、口座が即凍結されます。
対応は丁寧ではありますが、相続人様への承諾は特に求められるわけではなく、マニュアル的に口座が即時に凍結します。
被相続人の銀行等の口座の入出金ができなくなると(口座凍結されると)どうなるか
入金がされなくなるとどうなるか
被相続人の方が例えば、80代の方であると、入金は、年金(偶数月15日)か、(株式投資を行っている方であれば)配当金であると思われます。
年金については、死亡後に振り込まれてくるものはすべて未受領年金という扱いとなりますので、あとで未受領年金の請求権のある方が年金事務所に請求をかければ、未受領年金を取得できますので特に問題になることはありません。
配当については、6月と12月のタイミングで振り込まれることが多いです。
年1回の配当の株式銘柄であれば、6月にのみ配当金が振り込まれます。
株式投資を行っている方で、配当の受け取り方式を従来方式としている方(割合としては従来方式で受け取っている方が大多数)は、配当金が死亡後に入ってくる可能性があり、口座が凍結されると配当を受け取ることができず、未受領配当金として、株主名簿管理人(信託銀行等)に配当金が戻ります。
家賃収入のある方(いわゆる“大家さん”)については、賃料が毎月下旬~末日に入金されます。家賃受取口座が凍結してしまうと、借主の方が振り込み不能となりますので、借主の方にご迷惑をかけてしまう可能性があります。
出金(引き落としを含む)ができなくなるとどうなるか
被相続人の口座から出金する代表例としては、電気、ガス、水道、NHKの受信料、固定資産税の引き落とし(年4回)が考えられます。
引き落としができなかった場合、引き落としができなかったお知らせが郵送で届くとともに、コンビニ払いまたは、指定口座へ振り込むように指示されます。
いずれにしても、引き落としがなされなかった場合には、相続人様としては結構面倒な手続きとなる可能性があります。
結局いつどのようなタイミングで銀行等に連絡するのがよいのか
死亡~2カ月位の期間においては、相続人様も葬儀、初七日、あいさつ回り、役所への届出、四十九日法要など目まぐるしく忙しい日々を送ります。
そのような忙しい日々においては、引き落としや入金などがある口座は凍結させずに生かしておき、引き落とされるものは引き落とさせる方が便宜上良い場合もあります。
結論としては、銀行等への死亡の事実の連絡は、相続手続きに必要な戸籍収集が完了したあたりで行うのがよいと思います。相続手続きに必要な戸籍収集をすると、一般の方ですとそれだけで1か月から1か月半ほどかかります。
ちょうどその間に公共料金の引き落としなどはされてしまった方が、相続人様の手間が省けます。
そのため、たまき行政書士事務所で相続手続きのトータルサポートをする際にも、すぐに銀行等に連絡をすることはなく、戸籍収集が完了し、相続人全員を把握した位のタイミングで銀行に連絡を入れて銀行等の口座を凍結させます。
凍結までの期間に引き落とされたものは、相続人様のトラブルになることは特にないので、急いで銀行等に連絡する必要はないといえます。
ただし、例えば
- 会社の社長が死亡した
- 銀行に個人や会社で借入をしている
といった場合には、すぐに取引先の銀行に死亡の連絡をする必要があります。
なぜなら、会社の後継者や信用にかかわるからです。
死後引き出しは極力しないこと
相続の専門家と呼ばれる方々でも、遺産分割が難しそうな案件や、葬儀代が足りない時には、死後にATMで引き出しを行うことをお勧めすることがあります。
しかし、それは絶対にやめた方が良いでしょう。
まずは、銀行等との規約違反となりますし、外形的には窃盗罪の構成要件にあたる可能性があります。なぜなら、ATMで預金を引き出すことが可能だとしても、銀行等に「死亡の連絡を受けたら口座を凍結する」というマニュアルがある以上、銀行等はお金を引き出すことを承諾していないと推定されるからです。
どうしても葬儀代が足りないなどというときには、銀行によっては、例外的に、被相続人の口座から葬儀社に直接振り込みの形で対応してくれる場合もあるので、喪主でかつ法定相続人である方から銀行等に依頼をかけると良いでしょう。
(窃盗)
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
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