日本テレビ系列ドラマ‘‘相続探偵’’第4話を相続実務家の観点から解説します

相続・遺言コラム

相続探偵とは

日本テレビ系列によるテレビドラマで、令和7年1月から放送されております。クセが強いが頭が切れる元弁護士が相続専門の探偵として、相続にまつわる様々な事件を解決するというお話(相続ミステリー)です。
今回の第4話は、自筆証書遺言の偽造認知遺留分正当防衛という法律用語が出てきました。

相続探偵4話、京都 老舗和菓子屋の変―前編―

相続探偵第4話は、テレビで特集も組まれる人間国宝と呼ばれるほどの京都老舗和菓子屋の職人が死亡し、老舗和菓子屋の暖簾(のれん)や作業場などについての相続問題(息子2人、正妻と元婚約者であった従業員の女性)が発生したいわゆる‘‘争族’’案件でした。

最初に出てきた遺言は、妻と、妻と遺言者の間の子である正臣に2分の1ずつ相続させるというものでした。しかし、これは、相続探偵により妻の偽造した文章とわかり、その後、正式な遺言が出てきました。

正式な自筆証書遺言は、野心には、作業場とお菓子作りの機材と店舗、正臣には、暖簾と預貯金を相続させるというものでした。

この遺言の内容は当事者が二人(野心、正臣)とも同意したため、第4話ではその通りに遺産が分けられるところまでが描かれました。ちなみに、山村紅葉さん演じる妻は遺言書を偽造したため、相続人欠格にあたるとのことで、遺言者の財産を何も取得できないで終わるという結末でした。

山村紅葉さんが演じる妻や小関裕太さんが演じる正臣は、このお二人にしかできないのではないかというくらいに悪役に徹しており、さすが一流の俳優さんだと思いました。

自筆証書遺言の偽造

前回の第3話では、自筆証書遺言の破棄という犯罪を取り上げておりましたが、今回の第4話では、自筆証書遺言の偽造(刑法159条1項、有印私文書偽造罪)の話が出てきておりました。

(私文書偽造等)
第百五十九条 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
2 (略)
3 (略)

刑法

(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
 一~四 (略)
 五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

民法

上記の条文により、私文書偽造罪⇒相続人欠格となり、山村紅葉さん演じる妻は、相続分も遺留分もないこととなります。

認知、準正について

結婚をしていない男女の間にできた子供は、女性の子であることは出生の事実により証明できますが、男性については、父かどうかは明確にはわかりません。現在であればDNA鑑定などで血縁が判明することもあります。しかし、基本的には、その後、婚姻をし、準正という方法で、法律上も認められた子となるか(のちの婚姻による準正、民法789条第2項)、認知によって男性の法律上も認められた子とするかをしなければ法律上の男性の子(認知による準正、民法789条1項)にはならず、相続権が生じないこととなります。

相続探偵第4話内では、婚約者だったときに子(野心)を産んだが、その後婚姻せず(準正はしていない)、認知しているのかどうかはドラマ内では不明確のため、野心さんに法律上の権利があるのかないのかは不明でした。

二人の会話で兄弟の感じが全くなく、正臣は野心を兄とは全く思っていないと見えるため、おそらく認知はしていないのではないかと思いました。もしかすると、第5話で認知の有無は判明するのかもしれませんが、認知をしているかそれとも認知をしていないのかについては、遺言があれば今回のドラマ内ではそれほど関係を解く必要がないともいえます。そのため、認知の有無については、最後までわからないで終わるかもしれません。

(準正)
第七百八十九条 父が認知した子は、その父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する。
2 婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得する。
3 (略)

民法

遺留分

遺留分は、簡単にいうと本来相続権のある方が遺言によって自分の取り分を取得できなかった場合、例えば、一切の財産が当たらなかった場合などに最低限の財産を取得する権利を主張できるというものです。

今回の相続探偵第4話の中の、偽造された自筆証書遺言は、妻と妻との間の子供正臣さんにのみ財産を相続させるという内容だったので、野心さんが認知されており、遺留分権者だとすると法定相続分の2分の1にあたる8分の1の財産を取得するというものです。

第4話の二番目に出てきた遺言では、妻は除外されており、野心さんと正臣さんで分ける遺言内容であったため、遺留分権者としては、妻も対象となりそうですが、自筆証書遺言の偽造をした張本人であったため、相続人欠格にあたり、妻の遺留分はないとの話になりました。

正当防衛

相続探偵第4話の中で、ホテルの一室のベッドの下に隠していた本当の自筆証書遺言を相続探偵に取られたのを、番頭さんが力ずくで取り返そうとしたところ、桜田ひよりさん演じる助手に護身術のような形で抑え込まれたという場面で、番頭さんが「こんなことしてタダで済むと思うな!」といったところ、「(この抑え込み行為は)正当防衛(刑法36条1項)なので」と切り返したというものでした。

そして、殴りかかられたところを動画でとり正当防衛の主張ができるように保全しているというものでした。

(正当防衛)
第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

刑法

防衛が行き過ぎてしまうと過剰防衛になりますが、暴力が加えられそうなところを女性が短時間抑え込んでいるのみなので、相続探偵のいう通り(正当防衛の相当性を満たし)正当防衛として認められるでしょう。

まとめ

今回も楽しみながら法律も学ぶことができるという行政書士受験生や司法書士受験生、司法試験受験生にも興味深い内容であったと思います。

第5話放送後もたまき行政書士事務所(札幌市北区)では、相続の実務家の観点から解説をしたいと思います。

第4話は、第1話、2話、3話に続き、自筆証書遺言が問題となるケースでした。

やはり今回も、公正証書遺言を作成しておけば、そのようなもめごとにはならないのに・・・と思う内容でした。

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