【遺言を作成した方が良い方】
第21話 大地主、不動産投資家の方
相続・遺言コラム
不動産の未処理が一番厄介
例えば、図1のように配偶者が先に死亡、夫婦の子供一人などの条件が揃えば、相続人が1人ということもありますが、大体の方は、図2又は図3のように相続人は複数人おります。その時、一番問題となるのが不動産を誰が取得するかです。
不動産というものは、価値が現金や預貯金と異なり価格が1通りに決まるものではなく、何通りにも評価ができます。固定資産税価格、路線価価格、公示価格、実勢価格、収益還元法で出した不動産評価額など様々です。
そのため、先祖から土地を代々引き継いでいる大地主や不動産投資家が死亡し、相続人が複数人いると相続人同士でよい不動産の奪い合い、わるい不動産の押し付け合いが生じ、話し合いがつかず、最後はとりあえず共有となり下の世代に問題がさらに複雑化して引き継がれます。
また、とりあえず共有登記もしないで、全くの未処理の場合(相続登記せずそのまま故人名義のままに放置)すると、直接の法定相続人あるいは、法定相続人の死亡後に、法定相続人のさらに相続人に売却できない、利用もできない不動産の税金だけが代々引き継がれます。
税金が引き継がれるとは
税金というのは、固定資産税のことです。固定資産税は、基本的に所有者が支払うものですが、所有者が死亡したあとは、相続登記が完了するまで、所有者の法定相続人あるいは、その法定相続人が死亡した場合は、その相続人に納税義務者として請求が来ます。
不動産については、単に相続放棄をすれば終局的に解決するわけではないため、計画的に下の世代のために、生前の遺言作成(公正証書遺言)とお亡くなりになる前に不動産の処分をしていく必要があるでしょう。
大地主、不動産投資家が生前にすべきこと
1. 不動産の整理をする
大地主や不動産投資家の方は、遅くとも70歳位に達した時点で不動産の棚卸をした方がよいでしょう。棚卸とは、
- どこに所有している不動産があるか
- どの不動産が収益が上がっているか
- どの不動産が不良債権化(税金や管理費だけがかかりマイナスしか生じていないなど)しているのか
- ただ所有しているだけのバブル期に買ってしまった原野はないか
などを確認するところから始めるとよいです。
その後、自宅と収益が上がっている不動産、あるいは、将来収益が上がる可能性が高い不動産以外は、すべて売却や贈与を検討した方が良いと思います。
別の方に売却や贈与をすれば、不動産はうまく活用される可能性があり、社会のためにも収益が上がっていない不動産等を売却すべきと思います。
売却した不動産に利益が出ると、現金として残りますし、売却した不動産が赤字になったとしても、自分の手持ち資金で清算し、自分自身の代で解決するのが適切と思います。
2. 相続人と話し合いをする
「自分はこの家の当主(とうしゅ)なのだから、自分のことや先祖から引き継いだ土地の行方は自分で決めるのだ!」という古い考え方はやめて、全員でなくとも相続人となる方(配偶者や子供たち)と不動産について正面から不動産について話し合いをすべきでしょう。
その話し合い際のポイントは、自分がどうしたいということも大事ではありますが、相続人の方が今後不動産をどうしたいかを十分に聞いた方がよいでしょう。
自分が大地主、不動産投資家で大家業(オーナー業)が向いていても、相続人の方が向いているとは限りません、押し付けるのではなく相続人の方の気持ちを尊重しましょう。
また、先祖代々から引き継いでいたからそのまま引き継いでほしいという気持ちもわかりますが、そのような押し付けが相続人にとって金銭的・精神的な負担となっている可能性がありますので、「相続した後は売らずにそのままにしてほしい。」と相続に条件を付けるのも辞めた方がよいでしょう。
3. 公正証書遺言を作成する
ある程度不動産を引き継ぐ方が生前の話し合いにより決まっていても、相続が発生した後の手続きでその通りになるとは限りません。遺言がない限り改めて不動産や預貯金について遺産分割協議をする必要があるからです。
相続人は、被相続人の生前の話し合いで納得していたとしても(口出しする権利はないのですが、)相続人の配偶者や子が口を出してくる可能性があります。
公正証書遺言を作成すれば、遺言の無効の主張をされることはほぼないといえますし、遺言執行者を指定しておけば、遺言執行者が単独で手続きをすることができます。不動産を取得しない方が、別の方への不動産の相続について納得がいかなくても遺言執行者が職務として名義変更をすることができます。
まとめ
以上のように、
- ① 不動産の把握
- ② 売却等整理
- ③ 相続人との話し合い
- ④ 公正証書遺言を作成する
というのが、大地主あるいは、不動産投資家がやるべきことです。大地主、不動産投資家の多くは、不動産のほとんどを処分せず、保持し続けたままお亡くなりになるため、相続人に負担となることがあります。
70歳ころから元気なうちに数年かけて見直しをした方が良いかもしれません。たまき行政書士事務所では、大地主、不動産投資家の方の生前のご相談、遺言を多く作成しております。
当事務所では、大地主、不動産投資家の方が何も対策をせずに相続が発生してしまった場合の相続手続きも行っておりますが、解決はしたけれど、生前に公正証書遺言を作成していればもっとスムーズに相続人同士まとまったという事例も多く見てきております。
大地主、不動産投資家の方は一度、公正証書遺言などを検討のご相談を相続に詳しい専門家にしてみると良いかもしれません。たまき行政書士事務所でも、特に北海道の遺言・相続についてご相談を承っておりますので、お困りお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。
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