【遺言を作成した方が良い方】
第18話 非上場会社のオーナー社長

相続・遺言コラム

遺言を作成した方が良い方:
自分の会社として非上場株式(いわゆる自社株)をほぼすべて保有している経営者、または引退して会社はご子息に任せているが、株式はほぼすべて保有している方

行政書士 田巻 裕康

非上場株式とは、一般の方に株式市場で取り引きされていない株式をいいます。また、ここで想定している非上場株式とは、中小企業で、家族で経営をしているような閉鎖的な株式会社の株式を想定しております。一般に、自社株などと呼ぶこともあります。

今回は、自社株をほぼ100%持っているオーナー社長について、遺言を書いた方が良い場合が多いというお話となります。

社長個人名義の預貯金、不動産の他に自社株式も相続の対象となる

社長一人で個人事業主として活動し、その後、株式会社を設立して数十年会社経営をしているとします。この場合、職種にもよりますが、会社の資産(商品在庫、会社名義不動産、会社の預金等)が多く負債が少ない場合、株価(評価額)が高くなる傾向にあります

会社の規模によってさまざまですが、株価×株式数で数千万円となることがあります。

例えば、社長の推定相続人(現在、死亡したと想定した場合の相続人)が、社長の配偶者である妻と、後継ぎの長男のみという場合であれば、それほど問題となるケースは少ないですが、社長の推定相続人が社長の妻と後継ぎの長男会社に携わっていない都会に出た長女という構成の場合、遺言(特に、公正証書遺言)の作成を検討した方がよいでしょう

自社株の大株主の社長が遺言を作成した方が良い理由について

社長の財産が自社株の他に多額の預貯金や、市場売却の容易にできる札幌市中央区の区分所有マンションのようなものが多くある場合には、バランスよく分けるための遺産分割協議を進められることがあります。

しかし、自社株が相続財産に含まれる場合の相続は、多くの場合難しい遺産分割協議となります自社株をどのように考えるか相続人(後継者と後継者ではない者)によって意見が分かれるためです

事例を挙げて説明してみます。

中小企業の社長(自社株100%保有、札幌市西区で製造業を経営)が死亡した時の相続の具体例

相続人 妻は、先に死亡したため、
  • 長男(専務、会社後継者、妻と子が2人いる)
  • 長女(結婚し、東京で暮らしている、子供2人)
社長の相続財産
  • 自社株100株(評価額3000万円)
  • 自宅一軒家(札幌市西区)評価額2000万円
  • 預貯金計2000万円

紛争の原因となりそうな点

自社株は、計算上3000万円と評価がついているが、会社を経営し続ける場合、自社株に換金性があるわけではないため、長男としては、自社株は3000万円の評価をされると困る。他方、長女としては、東京に住んでいるため、自社株、自宅一軒家については、取得を希望しないが、例えば預貯金を全部もらったとしても、自社株と自宅を相続する長男とは、もらう額(長男は5000万円の評価分を取得、長女は2000万円の評価分を取得)に大きく差があると考えます。

このような場合、長男としても、預貯金をすべて長女が取得することに納得がいかないということになりますので、遺産分割が成立しないことが予想されます

遺言を作成していた場合

このような将来の事態に備え、オーナー社長は遺言を作成しておいた方が良いと考えます。例えば、長男に自社株、自宅と200万円の預貯金を、長女に1800万円の預貯金を取得させるというものです。

一見偏った遺言にも思えますが、実際に会社経営していく長男を優先する場合、このような分け方も良いと思います。

相続財産はそもそもオーナー社長が自分で蓄えた財産なので、生前にその帰属の行方を決めることができます。偏っても問題ありません

遺留分(法定相続分の2分の1、今回の事例では、1750万円が遺留分となる)という概念もありますが、この分け方ですと、遺留分を侵害することなく後で紛争が生じることも予防できます

まとめ

行政書士 田巻 裕康

今回は、オーナー社長は遺言を書いた方が良い場合が多いという点について解説しましたが、状況は個々に違います。

そのため、オーナー社長は、専門家に元気なうちに相談し、必要であれば遺言(公正証書遺言)を残した方が良いでしょう

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