遺言を作成する際の遺言執行者には誰を指定すれば良いのか
相続・遺言コラム遺言執行者とは
遺言執行者とは、遺言に書いてある内容を実現する人です。遺言には、主に相続が発生した時の相続財産の行方を遺言者が指定する内容が書かれますが、それを執行する(手続きする)人がいなければ、せっかく遺言を書いても遺言の内容を実現できません。
そのため、遺言は、公正証書遺言でも自筆証書遺言でも当然に遺言執行者の指定の記載をすべきです。
遺言執行者の記載のない遺言は、手続きがかなり困難となることが予想されます。
自筆証書遺言では、遺言執行者の記載のないものが半数以上を占めますが、そのような自筆証書遺言は、おそらく専門家の相談なく独自に書いたものだと思われます。
自筆証書遺言ではなく公正証書遺言を作成しましょう
今回のコラムでは、自筆証書遺言と公正証書遺言の細かな違いの解説は割愛して、簡単に解説したいと思います。
自筆証書遺言は、証人が特におらず、自筆で書くものであるため、客観的な信頼性に欠けることがあります。そのため、自筆証書遺言には、自筆証書遺言によって不利益を受ける方から、遺言内容の無効を主張されるリスクが常に付きまといます。
そのため、遺言を書くときはできるだけ公正証書遺言を作成すると良いでしょう。
公正証書遺言は、証人が2人いて、公証人が書いたという形式のものなので、客観的な信頼性が担保されるため、遺言内容が無効となるリスクがほとんどありません。
公正証書遺言を作成するとして遺言執行者は誰にすべきか
公正証書遺言の作成には、法律の専門職である公証人が関与するため、必ずと言ってよいほど、遺言執行者の指定を記載するように求められます。
そこで、だれを遺言執行者に指定すべきかが問題となります。これは、相続や遺言を専門とする事務所でも見解が分かれる所ですが、たまき行政書士事務所では、行政書士や弁護士などの専門職の方が遺言執行者になるのではなく、その遺言によって利益を受ける方(受遺者)で、かつ親族の方が遺言執行者になるのが良いと考えております。
理由としては、主に次の2つが挙げられます。
- ① 親族であれば、死亡した事実をいち早く知ることができるから
- ② 遺言によって利益を受けることは遺言を実現する動機になるので、遺言が確実に執行される可能性が高いから
親族かつ受遺者という方がいないのであれば、行政書士、司法書士、弁護士、あるいは福祉関係の方(専門職等)が遺言執行者にふさわしいと思います。
法律や福祉の専門職でない一般の方でも遺言執行者の役割を果たせるのか
遺言執行者の地位が強化されたので、現在、遺言執行者に指定された方は、預貯金の解約、不動産の登記申請手続き、保険の解約など遺言に係る一切の行為ができるようになっております。
かつては、明確な民法の規定がなかったのですが、実務慣習に合わせて民法が整備され、現在の民法には遺言執行者の権限が明記されました(以下、民法参照)。
(遺言執行者の権利義務)
民法(下線は、たまき行政書士事務所により加筆)
第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
3 (省略)
(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
2 (省略)
3 (省略)
(特定財産に関する遺言の執行)
第千十四条 前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
3 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。
4 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
遺言執行者は、預貯金の解約や不動産の登記手続きなど、難解な手続きを全部自分でしなければならないかというと、そうではありません。
その道の専門職の方に業務範囲を決めてもらい、部分的、あるいは総合的に委任することができます。
例えば、相続手続きや不動産の登記申請手続きについては、行政書士や司法書士、あるいは弁護士に委任することが可能です(民法参照)。
(遺言執行者の復任権)
民法(下線は、たまき行政書士事務所により加筆)
第千十六条 遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2 前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。
専門職に遺言執行者を任せていれば安心!?
公正証書遺言の原案作成を担当する行政書士や司法書士、あるいは弁護士の中には、行政書士などの専門職の方を遺言執行者に指定することを、積極的に推奨する方もいます。
しかし、以下のような問題があります。
遺言者の親族であれば、遺言者が死亡したことはわかることが多いですが、他人である専門職の方は、遺言者の親族から教えてもらうか、新聞のお悔やみ欄でしか知る術がないのです。しかも、最近はお悔やみ欄に載せないご家庭も多くなっております。
専門職は、遺言執行者を親族かつ受遺者とする場合と比べ、相続発生を知る機会が乏しいといえます。
したがって、公正証書遺言を作成する際に、専門職の方を遺言執行者に指定すれば安心とは限らないので、注意が必要です。
専門職の方が遺言執行者に指定されていた場合には、その専門職の方は責任をもって定期的に親族とコンタクトをとるなどして、遺言者の死亡を早い段階で知ることができるように努めるべきでしょう。
また、親族の方は、遺言執行者である専門職の方に遺言者が死亡したことを伝えれば、スムーズに遺言の執行ができます。
遺言について分からないことは専門家へ相談を
今回は、誰が遺言執行者になった方が良いかということを中心に解説しましたが、相続や遺言のことは、個別具体的な相談が必要です。
遺言を作成する前には、日頃から遺言や相続の実務に携わっている専門職の方に相談すると良いでしょう。
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