日本テレビ系列ドラマ‘‘相続探偵’’1話を相続実務家の観点から解説します。動画(ビデオ撮影)による遺言、自筆証書遺言の有効性について
相続・遺言コラム相続探偵とは
日本テレビ系列によるテレビドラマで、令和7年1月から放送されております。クセが強いが頭が切れる元弁護士が相続専門の探偵として、相続にまつわる様々な事件を解決するというお話(相続ミステリー)です。
おそらく、相続ミステリーという性質から、1話~9話あるいは10話を通して相続に関する法律(遺言の性質、相続人は誰になるか、相続分、遺留分、相続人欠格事由、遺産分割協議、兄弟姉妹相続事案)の話などが出てくると予想されます。
連続テレビドラマの場合少なくとも8話までは続くので、1話あるいは2話で完結しつつも、全体を通してどのように話をつなげていくかが見どころといえるのではないでしょうか。
相続探偵1話、或る小説家の遺言
早速1話から自筆証書遺言の話が出てきました。自筆証書遺言は、実務的にはかなりの確率でトラブルになることが多いため当然といえます。相続ミステリーとしてもっとも描きやすい素材の一つではないかと思います。
相続探偵第1話でも自筆証書遺言の有効性、同じ日付のものがある場合どっちが有効になるか、動画(ビデオ撮影)による遺言は有効かなどについて勉強できる内容でした。
小説家である今回の遺言者(遺言を残した人)が、動画撮影をして遺言とし、さらに同内容の自筆証書遺言を作成していた。しかし、自筆証書遺言は2通書かれていて2通目の遺言は、全く異なる内容であったがどちらが有効になるのかというものでした。
録画による遺言について
動画による遺言は、本人の表情や声のトーンで遺言者の意思の真実性・話の信憑性が担保できるとも思われます。しかし、動画による遺言というものは、民法という法律の文言からして当てはまらないものであるため形式を満たしておらず無効となります。
ただし、まったく無価値なのかというとそうでもありません。例えば、過去の裁判例を見ると自筆証書遺言の作成時の遺言能力が確かにそのときに有ったとの証拠の一つとして提出されることもあります。
第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。
民法
また、遺言としては無効でも、故人のメッセージとして使うことはあり得るため、全く価値がないとはいいきれません。
動画を参考に故人の意思を汲み取り法定相続人が遺産分割協議をするということも考えられます。
少し話はそれますが、実務では生前父がこう言っていたから(例えば、「この家については、長男が引き継いでほしい」と言っていたなど。)、父の意思通り、遺産分割すべきだと感じる相続人の方もいます。そのため、生前に残した故人のメッセージはどのような形であれ、遺産分割協議に影響を及ぼすことがあります。
ただし、繰り返しますが、生前に故人が繰り返し言っていたとしても、動画に残っているとしても、みんな言っていたのを知っているとしても、遺言としては利用できません。民法に定める方式ではないからです。
(遺言の方式)
民法
第九百六十条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
自筆証書遺言について
自筆証書遺言は、15歳以上の遺言を残そうとする方(遺言者)の直筆で、全文(ただし、財産目録をワープロ打ちするのは可)を書き、書いた日付、名前、押印がされていれば、形式上は比較的緩やかに認められます。自筆証書遺言は、被相続人の住所地の家庭裁判所に検認の申立てをするのですが、形式さえ満たしていれば検認自体は認められます(内容の有効性については家庭裁判所では、関与しない範囲となります。)。
家庭裁判所HP
遺言は、形式を満たすだけでなく、その前提として、遺言能力なども求められます。遺言能力とは、遺言を作成するときに遺言を作成するだけの能力があったかというものです。医学的に認知症だからといって即、遺言能力が否定されるわけではありません。法律上の総合的な判断となります。
例えば、直筆で書いているけれど強度の認知症で内容を全く理解しておらず、ある特定の相続人に操られた状態でただ書いているというものは、遺言能力がないとして、遺言能力を否定され、遺言自体を無効とされる可能性があります。
(遺言能力)
民法
第九百六十一条 十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
第九百六十二条 (略)
第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。
今回の相続探偵1話は、15歳以上、直筆、日付、名前、押印については、争いはそれほどないのだけれども、内容の異なる自筆証書遺言が2通出てきて、日付が全く同じであったというものでした。このような遺言は、私の経験では全くない事例ですが、この場合、どちらが有効かというと(遺言能力はいずれもあったという前提)後にかかれた遺言が有効となります。
相続探偵1話の結論は、客観的にどちらが後に書かれたものかが判明したため、日付が同じでも2通の遺言のうちどちらが有効な自筆証書遺言かが判明したというものでした。
下記に引用の民法1023条1項の、「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。」というところを平易な表現に直すと、前の遺言と後の遺言の内容が異なるときは、その異なる部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したので、後の遺言が有効になるということになります。
(前の遺言と後の遺言との抵触等)
民法
第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
まとめ

今回の相続探偵1話‘‘或る小説家の遺言’’は、相続問題で一番ニュースに上がる自筆証書遺言の有効、無効についての内容でした。第2話は、紀州のドンファン事件を連想させるいわゆる後妻業を営む女性が関係する相続をテーマにしているため、第2話についても、相続コラムで解説したいと思います。
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