相続放棄しても代襲相続できる場合について
相続・遺言コラム相続放棄と代襲相続の関係について
「相続放棄 代襲相続」と検索すると「長男が相続放棄した場合、孫である長男の子は代襲相続することはできない」という結論を説明したホームページの記事をよく見かけることがあります。これはこれで正解ではあるのですが、相続放棄と代襲相続の関係は、実際にはもっと複雑です。
一旦、相続放棄したと思われる財産についても、後々代襲相続ができる事例もありますので、単に相続放棄したからといって代襲相続ができないという事案以外もあるので注意が必要です。
遺産相続は誰が相続人となるかを確認することが最重要
相続できるかどうかの前提として、相続人が誰になるかを確定しなければなりません。言い換えると、相続権はだれにあるのかといってよいのかもしれません。
今回のコラムでは、実際に問い合わせのあった事例に近いモデル事案を作成し、解説したいと思います。事案を単純化するため、被相続人の財産が北海道札幌市北区の自宅不動産(土地建物、市場評価額1500万円)一つのみであると仮定してみたいと思います。
参考記事
モデル事案
親族達を以下の図で示します。相続人にはならない方も含まれていますので、だれが相続人になるか考えてみてください。現在を令和4年10月1日とします。
被相続人X死亡時には、配偶者である妻Y、長男Z、長女がいた(長男と長女には、それぞれ成人した子たち(被相続人からみると孫)がいた)。
被相続人の死亡後、妻Yも健在であり、特に自宅の名義変更(相続登記)をすることなく固定資産税のみ支払いながらしばらく暮らしていた。
その後、被相続人の遺産分割協議が未了の期間の、令和2年6月1日に被相続人の長男Zが死亡。長男の配偶者や長男の子Bは、長男に借り入れがあり、その総額が不明であったため念のため家庭裁判所に相続放棄をした。
長男Zには、実は、前配偶者との間に長男の子Aがおり、BとAは、1度も交流がない。
令和4年7月1日頃、85歳になる被相続人の妻Yが施設に入ることになり、建物が老朽化しているので相続人の誰かに名義を変更し、リフォームするか、あるいは、一旦相続人の誰かに名義変更し売却するかを検討しなければいけない状況となった。
被相続人の財産は、自宅不動産(評価額は、1500万円)のみ。
仮に、長男の子Bが不動産を相続する場合に、自分の父(被相続人Xからみると長男Z)の相続の際に相続放棄したのに被相続人Xの自宅不動産を相続する可能性はあるのだろうかと相談あり。
長男の子Bが被相続人の自宅不動産を相続する一つの方法
第一段階:被相続人Xの妻Yへ相続登記
相続手続きは、まず初めに被相続人の死亡日時点の法定相続人の確認から始まります。
今回の事例では、被相続人の死亡日時点(平成30年4月1日)の法定相続人は、妻、長男、長女の3人であります。
もっとも、遺産分割協議書作成前(遺産分割協議未了中)に長男Zが死亡しているので、令和2年6月1日の長男が死亡後については、被相続人Xの相続人は、被相続人の妻Y、長女、長男の妻、長男の子B、長男の子Aの5人となります。長男の妻、長男の子B、長男の子Aは、被相続人の法定相続人である長男の相続人であるため、いわゆる“数次相続人”という呼称となります。
しかし、長男の妻と長男の子Bは、長男(2人から見ると夫であり父親)の遺産について、令和3年7月1日に相続放棄をしています。
そのため、令和3年7月1日以降~現在(令和4年10月1日)までに被相続人の遺産分割協議をする場合、長男の妻と長男の子Bは、被相続人の数次相続人ではなくなります。
もっとも、長男の子Aは相続放棄をしていないので、現在においても、被相続人の数次相続人となります。
結論として、令和3年7月1日以降~現在までに、被相続人の遺産分割協議をする場合、協議に参加すべき方は、被相続人の妻Y、被相続人の長女、長男の子Aの3人となります。
この3名で、被相続人名義の自宅不動産を被相続人の妻の所有にするとの協議が成立したならば、被相続人の自宅不動産を被相続人の妻Yに移転させることができます。
なお、長男の妻と、長男の子Bについては、長男(2人から見ると夫であり父親)の相続放棄したことを示す“相続放棄申述受理証明書”を被相続人の妻Yに渡し手続きに協力することとなります。
第2段階:被相続人の妻Yが将来死亡したときに長男の子Bが代襲相続する
長男の子Bが相続放棄したのは、あくまで自分の父親に対してです。被相続人の妻Y(長男の子Bにとっては、祖母)の相続放棄をしたわけではありません。
第1段階の話では、“(長男の)数次相続人”という肩書があったため、Bにとっての祖父の遺産については、取得する権利はなくなっていました。
しかし、一旦、被相続人の妻Y(Bからすると祖母)に名義が移った後には、数次相続人ではなく、代襲相続人という地位になるため、遺産分割協議に参加する資格が復活します。
つまり、被相続人の妻であるYが将来死亡した時の法定相続人は、長男の代襲相続人である長男の子B、長男の子A、長女の3人となります。
仮に、この3名で総合的な判断により長男の子Bに自宅不動産を移転させたいとなれば、被相続人となったYの遺産分割協議として長男の子Bが取得することも可能です。
理論上は可能でも相続の場合、感情問題でうまくいかないことも多い
たまき行政書士事務所では、数次相続事案や兄弟姉妹相続事案など、他の事務所では、暗に断られた方のご相談をお受けし、解決までたどり着くこともあります。
しかし、法理論上可能でも、相続手続きは、相続人となる方の全員の協力がいるため、相続人同士の仲が悪かったり、相続人の1人が強気で物事を進める態度を取っていたりすると、うまくいく可能性は極めて低くなります。
そのため、業務をお受けする場合には、人物関係をかなり詳しくお聞きし、うまくいく可能性がある場合にのみ着手していきます。
だれが相続人になるかは結構複雑で難しい
ほとんどの事例であれば、だれが相続人となるかは、相続に詳しい専門家であれば即時に答えることができますが、数次相続や代襲相続が複数重なり合うと非常に読み解くのが難しくなります。
相続人が誰になるかはかなり重要で、相続手続きの出発地点でありますのでお困りの場合は、一度相続の専門家にご相談してみると良いでしょう。
札幌市および北海道の相続についてお困りの際は、ぜひたまき行政書士事務所にご相談ください。
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