【その終活間違っているかも!?】
第5話 「リバースモゲージを利用して老後資金を作ろうかな」と思っている方
相続・遺言コラム
自宅を担保にして老後資金にすることができるリバースモゲージという制度
リバースモゲージとは、主に一軒家を所有する高齢者向けの融資制度の種類の一つで、自宅に住みながら、自宅を担保にして老後資金を借り入れる制度です。
借入金なので返済が必要ですが、返済は利息のみでよく、死亡後に家を売却して弁済するという制度設計がされております。
商品の宣伝の際には、自宅に住みながらまとまった老後資金を得ることができますといううたい文句になりますが、実際には、借金です。
自宅に住みながら老後資金を得る手段として、似ているが全く異なるリースバックという制度があります。リースバックは、自宅を売却して資金を得る(その後は、賃貸借契約の借主として住み続ける)のに対して、リバースモゲージは、自宅の名義は借入人の名義のままで(売却しないで)、自宅を担保にして(抵当権に入れて)資金を得るというものです。
リバースモゲージの取り扱いは主に金融機関
リバースモゲージは、自宅を担保として老後資金を貸し付けるものなので、主に金融機関が取り扱っております。Googleなどの検索エンジンで、一度、「リバースモゲージ」と検索すると、その後、リバースモゲージの広告がいっぱい出てきます。
リバースモゲージのメリット・デメリットについては、広告内で確認することができますので詳細は各金融機関の解説に委ねますが、ここでは、相続手続の実務家である行政書士兼宅地建物取引士の田巻の視点から気を付けておいた方が良いと思うことを解説したいと思います。
1. 借り入れられる金額は少ない割に、土地建物全部に抵当権が設定される
物件評価額に比べ、借り入れられる金額が相対的に少ない理由は、高齢者の住む自宅には、リスクがつきものであるからです。リスクというのは、死亡の形態(孤独死、事故死等)によっては、事故物件扱いになるというリスクです。また、住んでいる自宅を担保とするため、細かな設備点検などはできないので、金融機関側の立場としては、不動産の価値を計る際に価値を少なく見積もらざるを得ません。
そのため、例えば、空き家として売却すれば、3000万円の査定額が付くような住宅であれば。多く見積もっても、借りられる額は、1500万円から1800万円が限度になるでしょう。
リバースモゲージを利用して、自宅に抵当権が設定されている場合、買い手は事実上現れず、売却することは不可能となります。そのため、リバースモゲージを利用して抵当権を設定されると所有権はそのままといっても所有権はないものと同様の状態となります。
2. 返済は利息のみであるが、利息は住宅ローンなどと比べ高く高額の利息をずっと払うこととなる
住宅ローンは、利息が1%前後で借りられますが、リバースモゲージは、利息が2%~3%(変動金利を採用)と高額です。また、住宅ローンは、利息と同時に元本も返済するため、時間の経過とともに借入額(利息と元本)が少なくなるのに対し、リバースモゲージは、基本的に元金は減らないため、借り入れた金額(老後資金)の全部に対して高額な利息を払い続けることとなります。
3. 将来の法定相続人に負担がかかる
リバースモゲージは、法定相続人が借入人である不動産所有者が死亡した後の残債を全部一括で弁済する制度設計のため、借金の弁済の負担を法定相続人に強いることとなります。
一般的なケースでは、自宅を売却して全部弁済できますが、所有者(借入人)が長生きをして担保に入れている不動産(リバースモゲージの対象物件)の価値が時間の経過で下落する場合、売却してもさらに残った借金を法定相続人が弁済する必要があります。
もちろん、不動産が想定よりも高額で売却できると、弁済後に資金が十分残る場合もあります。
いずれにしても、通常の遺産分割による相続手続きとは異なる活動(リバースモゲージを利用した不動産売却⇒即残債の一括弁済)をするため、このことがきっかけで遺産分割協議に影響が出る(揉める)可能性があります。
リバースモゲージは、終活には不向きな制度かも
終活とは、‘‘身の回りのものや契約ごとを整理していく作業’’であると思います。しかし、リバースモゲージの契約は自身の財産、契約ごとを複雑にし、契約者自身その制度のリスクを把握できません。リバースモゲージは、終活の‘‘身の回りのものや契約ごとを整理していく’’という概念からはかけ離れたものとなりますので、相続や遺言の実務家の観点からはお勧めできない制度となります。
リバースモゲージの企画元である金融機関も高齢者に貸し出すというリスク(収入が見込めない、いつ死亡するかがわからない方に、不動産だけを頼りにして貸し出すというリスク)は計り知れないため、当然リスクの少ない範囲での貸し出ししか行いません。
老後資金と終の住処の確保はどうすれば良いか
まず、リバースモゲージのような実質的な借り入れの制度は利用しないことです。借入は、本当はないものをあるものにしてしまうものであるため、自分の懐事情を誤認し、余分な支出が増えます。借入は事業者であれば、その借入を元手に増やすこともできますが、老後資金は減ることはあっても増やせる見込みはほとんどありません。
老後資金を増やすのであれば、いま住んでいる住宅にこだわることなく、価値のある状態で家を売却し、その資金で住み替え(高齢者向け住宅の購入や介護付き高齢者居住施設への入居の検討や子供との同居)をするのがよいと思います。
先ほどの例でいうと、通常自宅を売却して3000万円を得られるのに対し、リバースモゲージを利用すると、1800万円-810万円(3%の利息分15年弁済として)=990万円程度しか利用できない事となります。
毎月借入のスタイル(年金感覚で受け取れると宣伝しております。)でリバースモゲージを利用すると利息は抑えられますが、2%から3%の利息を払い続けることに変わりありません。
リバースモゲージは、リースバックに比べマイナーな制度なので、あまり社会問題として表面化してきておりませんが、おそらくリースバックのように国民生活センターからの注意喚起などがそのうちされるのではないかと予想します。
まとめ
今回は、リバースモゲージの制度について解説しましたが、終活でお困りの方の置かれている状況は様々です。
終活相談は、相続や遺言、不動産の実務経験がないと的確なアドバイスをすることが困難な分野です。本やネットであふれる机上の空論では解決は難しいといえます。
例えば、不動産を売る専門の方に相談をしたら不動産を売るのが最適とアドバイスを受けますし、保険の方に相談すれば、保険をお勧めされます。銀行に相談すれば、リバースモゲージを紹介されます。相談する相手によって、終活対策の発言は変わりますので、できるだけ中立的にものを言える立場の方に終活相談をするのがよいでしょう。
たまき行政書士事務所では、行政書士兼宅地建物取引士である、田巻が直接お客様の事情をお聞きし、遺言や税、不動産実務、相続手続きの観点から中立的にアドバイスをすることが可能です。
たまき行政書士事務所では、ご希望の方に相続や遺言、不動産、終活のご相談を無料で行っております。一度、実務家の観点からアドバイスしてほしいという方がおりましたら、お電話、メール、ラインにてお気軽にお問合せください。
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