戸籍編(高齢者職権消除)
相続・遺言コラム相続人調査をしていると、戸籍に、相続人様にも想像できないような記載を発見することがあります。
その一つに、死亡しているはずの方の戸籍が、死亡の記載(除籍)になっていないということが挙げられます。
死亡しているのに死亡の記載のない戸籍とは
死亡しているのに、死亡の記載のない戸籍とは、戸籍上は生きていることになっている戸籍です。
死亡している方の戸籍に死亡の記載がない場合、必ず大きな問題となります。
なぜなら、戸籍上生きていることになると、その方が法定相続人に当たる場合、遺産分割協議書に署名押印をする必要がありますが、実際には死亡しているので絶対に署名押印できないからです。
また、子供がいない、かつ、両親が死亡しているような方が死亡した相続事案、いわゆる“兄弟姉妹相続事案”では、例えば、父が死亡しているのに戸籍に死亡の記載がない場合、兄弟姉妹に相続権を生じさせることができず、父が相続人となってしまうのです。
死亡の実態と戸籍の記載を一致させる方法
死亡しているのに死亡の記載がない戸籍を発見した場合、死亡の実態と戸籍の記載を一致させる方法は主に2つあります。
1. 家庭裁判所に、死亡の記載のない方の失踪宣告を申し立てる
家庭裁判所に失踪宣告を申し立てると、戸籍に死亡の記載がない方を法律上死亡させることができます。
失踪宣告の手続きは早くても6か月位かかりますが、高齢者だけでなく年齢を問わず対応できる方法です。ただし、「7年以上生死不明」など要件を満たす必要があります。
家庭裁判所のホームページなどで詳しい方法を確認できます。
2. 戸籍を保管している自治体に高齢者職権消除を申し立てる
120歳以上生きていることになっている方の戸籍に死亡の記載をする、高齢者職権消除という方法があります。
1の失踪宣告の制度は、家庭裁判所経由で行う方法であるため、手続きが長期化し難度が高い制度といえます。
今回は、高齢者職権消除について解説したいと思います。
高齢者職権消除の制度
高齢者職権消除とは、120歳以上の高齢者の戸籍を自治体の職権で消除(除籍の記載をする=法律上死亡したこととする)する制度です。
日本の最高齢者が119歳(令和4年5月30日現在)であることを考えると、120年以上前に生まれた方は社会通念上、死亡していると判断できるため、120歳以上の方の戸籍は職権消除できることになっています。
高齢者職権消除は自動的に行われるものではなく、必要が生じたときに、戸籍を保管する役所で随時行っています。
高齢者職権消除の際には、内部処理(役所から法務局に連絡する等)がありますが、2~3週間で職権消除され、法律上死亡したこととなります。
失踪宣告の制度とは異なり役所の職権で処理してくれるので、早いタイミングで除籍の記載がされます。
120歳以上で死亡の記載がない戸籍が出てきた場合には、戸籍を保管する役所のご担当者に職権消除が可能か問い合わせてみるとよいでしょう。
まとめ
死亡しているのに、生きていることになっている戸籍を発見した場合には、
- ⅰ. 生きていれば120歳以上だが、戸籍に死亡の記載がない方がいる場合は、戸籍を保管している自治体に“高齢者職権消除”を依頼する。
- ⅱ. 死亡しているが、戸籍に死亡の記載がない方がいる場合は、家庭裁判所に“失踪宣告”を申し立てる。
と良いでしょう。
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