日本テレビ系列ドラマ‘‘相続探偵’’第5話を相続実務家の観点から解説します
相続・遺言コラム相続探偵とは

日本テレビ系列によるテレビドラマで、令和7年1月から放送されております。クセが強いが頭が切れる元弁護士が相続専門の探偵として、相続にまつわる様々な事件を解決するというお話(相続ミステリー)です。
今回の第5話は、特に法律用語などは出てこなかったのですが、兄弟の確執、経営者の父と後継ぎの息子たちの苦悩など様々な相続にまつわる深い話でした。
相続探偵5話、京都 老舗和菓子屋の変―後編―
相続探偵第4話(前編)と5話(後編)は2回にわたって完結する内容でした。テレビで特集も組まれる人間国宝と呼ばれるほどの京都老舗和菓子屋の大将が死亡し、老舗和菓子屋の暖簾(のれん)や作業場などについての相続問題(息子2人、正妻と元婚約者であった従業員の女性が発生したいわゆる‘‘争族’’案件)でした。そして、争族案件になることを見越していたのか、和菓子屋の大将が自筆証書遺言を残しており、その内容は、預貯金・暖簾(和菓子の老舗である鳳凰の看板)を(海外で遊び歩いているとうわさされている)正臣に、作業場と売り場は和菓子職人の野心にというものでした。
第4話では、正臣と野心ともに大将である父の自筆証書遺言に納得し、その通りに和菓子屋の大将の遺産を分けましたが、第5話では、その数か月後にどうなったかが描かれました。
正臣は、実は、海外でただ遊びあるいていたわけではなく語学と経営(MBAなど)を学んでいたためインバウンド需要も取り込みスタートダッシュは成功したものの、野心のような一流の和菓子職人がいないため、すぐに客足が途絶えることとなりました。
野心の方は、亡くなった大将と同じクオリティの和菓子を作れても原価計算や集客、資金計画を立てるなどがまったくできず経営センスがないため当初から経営が成り立たない、銀行も融資してくれないという状態となりました。
そこで、相続探偵が、和菓子屋の大将が作成した自筆証書遺言の「一流の和菓子職人(野心)に作業場と売り場を、一流の経営者(正臣)に預貯金と暖簾を相続させる」という意図を紐解き、誤解があった2人の仲を結びつけるのでした。
兄弟の確執と、経営者の父と後継ぎの息子の意思疎通の難しさ
実際の相続事案でも、同じ仕事に携わると兄弟間、父子間で確執が生じることがあります。珍しいことではなく私の感覚では、同じ仕事をしている父子及び兄弟の8割くらいに互いに確執が生じていると体感しております。
どちらが間違っているわけでもなくどちらも会社のことを考えているが、考え方や方向性が異なるため、同じ業界にいると互いの考えや人格を受け入れられなくなる状態となります。
同じような現象で、母と娘、姉妹同士で確執が生じることがあります。例えば、同じスポーツをしていた場合(母はプロフィギュアスケーター、娘もフィギュアスケーター)などでもそれぞれ目指すところ(スケートが好きでうまくなりたい)は同じなのですが、考え方の違いで確執が生じてしまうことがあります。
大相撲やプロ野球の世界でも父と息子あるいは、兄弟に確執が生じて何十年も確執が解けることがなかったという事例もありますがいずれの場合も同性であることが確執のポイントです。
相続探偵第5話の中では、桜田ひよりさん演じる助手が母に対して許せない部分があって確執が生じてしまっておりましたが、これも女性同士だから許せないということがあったのかもしれません。
確執が生じている者同士の話し合いによる遺産分割は難しい
相続探偵の第5話では、相続探偵の粋な計らいによりあっという間に確執が解消され、二人で仲良くやっていこうとなりましたが、実際の相続事案では、そうはいかないことがほとんどです。
たとえば、仮に、今回の相続探偵第4話、第5話で遺言がなかったとしたら、通常通りの遺産分割協議で、和菓子屋の大将の遺産を短期間の協議によって分割することは不可能であったでしょう。
そのため、今回のように兄弟、母で共同経営しているような事案では、遺言の作成が必須といえます。
そして、今回の相続探偵のドラマでは自筆証書遺言を残しておりましたが、実務では、公正証書遺言を作成する方が良いといえます。
自筆証書遺言は、遺言によって不利になった相続人から無効を主張されやすいからです。
公正証書遺言を作成しておけば、遺言自体が無効とされるリスクは限りなく少ないため、今回の相続探偵第4話と第5話で出てきた和菓子屋の大将も公正証書遺言を作成しておくべきであったといえます。
参考記事
父が創業者、後継ぎが息子兄弟のパターンで父が遺言を作成しないで死亡してしまった場合
実務では、父が創業者、後継ぎが息子兄弟のパターンでも遺言を作成していない事案の割合の方が多いです。そこで、実際に相続が生じてしまったらどうするか考えてみます。
例えば、共同経営している兄弟の兄が弟にこのように分けたらどうかと提案した場合、弟からすると兄が自分の都合の良いように提案しているかもしれないとなりますし、また、兄の側からしても当事者の自分が分割内容を提案したら弟がどう思うかと不安になると思います。家族経営をしていないような一般の家庭においては、兄が弟に提案、弟がそれに応じるというケースでよいと思います。実際にも大多数はそのように遺産分割が決まります。
しかし、共同経営のような場合には、一度、相続の専門家に相談した方が良いと思います。
だれに相談するかですが、兄弟同士ですでに話し合いもできないようなら相続専門の弁護士、兄弟同士話し合いができてできるだけ円満に解決したいのならば、相続専門の行政書士か司法書士、あるいは税理士がよいでしょう。
ただし、「相続専門」や「相続が得意」とホームページに書いてあっても、実際には経験が浅い方やただ専門家をあっせんするポータルサイトである場合もあるので、注意が必要です。
実際に相続や遺言の実務を行っている専門家に相談するのが良いと思います。
年間で士業一人頭少なくとも30件以上は相続や遺言を業務として行っているところでなければ、相続遺言の専門家とは言えないのではないかと思いますので、電話やメールの初回の対応で本当に実務に携わっているかどうか判断するとよいでしょう。どうも話がかみ合わないという場合には、実務経験が浅い方かもしれません。
相続問題は最終的には感情問題
相続には一定の法律があり、法律によって解決の目安がつきますが、実際にはほとんどが相続人同士の感情の問題です。
遺言を作成する場合には、法定相続人それぞれがどう思うかを考えて書く必要がありますし、遺言がない場合には、自分の立場だけではなく他の法定相続人の気持ちも配慮しながら自分の考えを話す必要があります。
一方的に自分に有利なことばかり初期段階で主張すると遺産分割ができないで終わる(預貯金が凍結したまま、不動産の名義が亡くなった方のままになる)可能性もありますので相続の話は慎重にする必要があります。
今回の相続探偵第5話も相続は感情問題であることを考えさせられるものでした。第6話以降も相続実務家の観点から解説したいと思います。
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