共同相続人に住所を知られることなく相続放棄をすることができるか
相続・遺言コラム事情により住所を知られたくない兄弟姉妹もいる
当事務所は、様々な相続の事案のご相談を受けますが、年に数回あるものとしては、
- ① 相続放棄したいが、放棄した後自分の住所を共同相続人に知られたくない
- ② 法定相続分の金銭はもらいたいが、共同相続人に住所を知られたくない
というご相談を受けることがあります。
今回のコラムでは、①の相続放棄したいが、放棄した後自分の住所を共同相続人に知られたくないというご意向を実現できるかについて解説したいと思います。
なお、②の法定相続分はもらいたいが、共同相続人に住所を知られたくないについては、過去にQAを作成しておりましたので、よろしければ下記の記事をご参考にしてみてください。以下、共同相続人を単に相続人として表現します。
一人の相続人が相続放棄した後の流れ
相続放棄は、自分だけの意思で行うことができます。例えば、父が死亡し、相続人が長男と二男のみで、二男が相続放棄した場合、長男が一人相続人となって父の遺産について、遺産分割協議をすることなく相続をすることができます。
ただし、二男が相続放棄をしたという証明書(相続放棄申述受理証明書)が必要となります。
金融機関や法務局の手続きでは、この相続放棄申述受理証明書が必ず必要となります。
自治体の税金の滞納分の支払いなどについては、相続放棄申述受理証明書までは必要でなく、相続放棄申述受理通知書という通知書で足りる場合もあります。
通常は、相続放棄申述受理証明書について、相続放棄をした相続人自身が家庭裁判所に請求し受領し、相続放棄をしない相続人に渡すという流れですが、仲が良くない、相続放棄した方が相続放棄申述受理証明書を送ってくれないなどの理由で、相続放棄申述受理証明書を直接渡すことが出来ない場合には、相続放棄申述受理証明書を相続放棄をしていない相続人が代わりに取得することも可能です。
その場合、事件番号を照会し、事件番号がわかったら他の相続人の相続放棄申述受理証明書を取得できます。
相続放棄申述受理証明書に書いてある内容
相続放棄申述受理証明書に書いてある記載内容は、
- 事件番号
- 相続放棄した相続人の氏名
- 被相続人の情報
です。
被相続人の情報は、住所、本籍、生年月日などフルの情報が記載されているのですが、相続放棄した相続人の情報は名前のみです。
相続放棄の手続によって他の相続人に住所が知られることは基本的にはない
相続放棄申述受理証明書の、相続放棄した相続人の情報は名前のみですので、住所は知られることがありません。
そのため、他の相続人に何らかの事情で住所を知られたくない場合でも相続放棄をしても問題がありません。
ただし、基本的に知られることはないのですが、相続人は、被相続人の相続発生の場合に限り、他の共同相続人の戸籍や戸籍の附票を取ることが可能です。
そのため、何も手続きをしないと戸籍の附票によって住所が判明してしまいます。
戸籍の附票や住民票を他の相続人に取得されないための手段
典型例としては、離婚協議中のDVを行う配偶者から別居してその別居先の住所を知られないようにするような場合や、酒癖の悪い家族の1人から逃れたいような場合があります。
まずは警察に相談の上、支援が必要と判断されれば、市役所、又は区役所又は町村役場の戸籍住民課等で加害者や第三者からの戸籍の附票や住民票の請求を制限することができます。
そのため、他の相続人に絶対に住所を知られたくないという場合、相続放棄の手続き(相続放棄の申述)の他に、このDV等支援措置を受ける必要があります。
詳しくは、下記のホームページ等から確認いただけます。主に札幌市の該当箇所を集めました。
参考
【PDF】加害者からの所在確認を目的とした、住民票、戸籍の附票の交付請求を制限|札幌市
配偶者等からの暴力(DV)対策/札幌市
DV・ストーカー等被害者のための支援措置|札幌市
配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方は、申出によって、住民票の写し等の交付等を制限できます。|総務省
加害者以外も戸籍の附票の取得が制限されることがある
当事務所でも、行政書士の職務上請求書で相続人全員の戸籍と附票を収集する過程で、相続人の方がこのDV等支援措置の戸籍の附票に該当する場合があります。
その場合、この方はDV等支援を受けている方ですので、住所は慎重に取り扱いくださいという案内文が一緒に送られてきます。
もっとも、相続手続きにおいては、基本的に全員の住所を少なくとも相続人代表者は知る必要がありますので、行政書士が職務上請求書で戸籍の附票を請求すると出してくれることが多いです。
しかし、DV等の被害状況によっては、全く戸籍の附票や住民票を出してくれないこともあります。
そのときは、相続手続き自体難しくなることが多いです。
まとめ
今回の相続コラムは、かなりマニアックともいえる内容でありましたが、実は、相続においては様々な家庭環境がありますので、一筋縄ではいかない事案が多々あります。
- どこに相談して良いかわからない
- 地元の事務所で相談したが手に負えないため暗に断られた
というような場合、一度たまき行政書士事務所にご相談してみてください。
解決の道筋が見えることがあります。
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