故人の証券口座内にある〇〇MRFとは
相続・遺言コラム証券会社の相続の時ほぼ必ず出てくる〇〇MRFとは
証券会社の口座に株式や投資信託を保有している方(以下、「証券口座をお持ちの被相続人」)がお亡くなりになって、残高証明書などを見ると、「〇〇株式会社 100株」など株式保有数に加えて、(野村證券であれば)「野村MRF 350,000口(1口1円)」という記載を必ずといってよいほど目にします。
MRFとは、マネーリザーブファンドの略ですが、マネーリザーブファンドという言葉からは、どのようなものなのか想像がつかないでしょう。
MRFという用語を調べると、オープン型の公社債投資信託と説明がありますが、この説明では余計にわからなくなります。
そこで、相続専門行政書士の立場から、一般のお客様にわかりやすい表現にかみ砕いて解説したいと思います。
証券会社各社で導入されているMRF
MRFをシンプルに表現すると、証券会社の口座内にある普通預金と考えればよいでしょう。
銀行の普通預金のように、株式を買うための資金をMRFに入れておくというもので、比例配分方式で配当を得たときには、1口1円分として配当金がMRFに入ってきます。
野村證券ですと野村MRF、みずほ証券ですとMHAMのMRF、または新光MRF、SMBC日興証券ですと日興MRFと表現されます。
なぜMRFが導入されているのか
証券会社は銀行ではないため、証券口座を保有するお客様に、約定の利息を自動的に渡せるわけではありません。
そのため、銀行の金利が高かった時代は、手許現金を銀行の普通預金や定期預金に入れてしまう方が多く、証券会社としては、株式以外の資金を証券会社内に留め置く手段を模索しておりました。
そこで、導入されたのが各証券会社の独自のMRFです。
MRFは投資信託ですので元本保証はないのですが、MRFで運用されるのは、破綻リスクのほぼない安定した公社債のみですので、基本的に元本保証されているのと同様です。
さらに、安全な公社債であれば、低配当ではありますが、運用元は一定の配当や利息を得られます。
そのため、現金を証券会社のMRFに入れておけば、年0.002%(銀行の普通預金金利は0.001%)位の利息を得られます。
そのため、MRFにリスクはほぼなくメリットが大きいため、証券口座をお持ちの被相続人の方の残高証明書を見ると、ほぼ必ずMRFが1口単位で記載されており、多くの方がMRFを保有していることがわかります。
MRFを相続するとどうなるか
例えば、野村證券に証券口座をお持ちの方(被相続人)が、北海道電力株を100株、野村MRFを300,000口お持ちの状態でお亡くなりになったとします。
相続人の方が最初にすることは、野村證券に相続人自身の口座を作ることです。
相続人の方が、被相続人と同じ証券会社に証券口座を作るのがポイントです(被相続人が野村證券なら相続人も野村證券に、被相続人が大和証券なら相続人も大和証券に口座を作る)。
異なる証券会社間でも移管(株式の相続手続き)できなくはないですが、移管できるのは上場会社の株式のみなので、MRFは移管できません。
まず、被相続人と同じ証券会社に相続人の口座を作り、各証券会社の相続手続依頼書(移管依頼書)に相続人全員が署名押印し、証券を相続する方の口座番号を記入し、移管手続きを完了させます。
※ ちなみに、株式の相続手続きは、移管すると表現することが一般的です。
その後、北海道電力株100株と、野村MRF300,000口が相続人の方の証券口座へ引き継がれます。相続人の方が売却したければ、すべて売却する(現金化する)ことも可能です。
MRFは普通預金とほぼ同様ですので、300,000口売却すると300,000円に換金できます。
被相続人の方が証券会社に口座をお持ちの場合は専門家に相談
今回のコラムはMRFを中心に解説しました。
証券会社の口座の相続手続きは、銀行や信用金庫などの相続手続きに比べると大変ですが、難度は下がります。
しかし、実際は証券会社の相続手続きだけでなく、信託会社へ未受領配当金の請求などをする必要があり、銀行の相続手続きに比べるとおよそ三倍の手間と技術がいります。
そのため、証券会社に口座をお持ちの親族がお亡くなりになったときには、早めに相続手続きの専門家に相談するのがおすすめです。
なお、士業といわれる行政書士、司法書士、弁護士でも、証券会社の相続手続きを経験したことが無い方の方が多いと思われますので、普段から相続手続きを行っている事務所にご相談するとよいでしょう。
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