亡くなった方が独身・子無しで両親もすでに他界していた兄弟姉妹相続のケース
(相談者:後志地方女性)
相続の解決事例
事案
今回亡くなった方は独身で、ご自身に子がおらず、両親はすでに他界していたため、亡くなった方の兄弟姉妹に相続権がある、いわゆる“兄弟姉妹相続事案”でした。
兄弟姉妹相続事案の場合、甥や姪が代襲相続人として出てくることが多く、今回の事案でも、割合としては甥や姪の方の方が兄弟姉妹より多いという相続人構成でした。
亡くなった方の主な財産(遺産)構成は、ご自身の住んでいた自宅不動産と預貯金でした。
事案の特殊性
ご自身に子がいない方で、特に独身の方が亡くなった場合、不動産は保有しておらず、預貯金と現金および家具などの動産が相続財産であることが、割合的には多いです。
※ 動産の価値はほとんどないため、通常の遺産分割では、動産以外の遺産分割をメインに検討する必要があります。
しかし、今回お亡くなりになった方は、独身でしたが自宅不動産を所有しており、この自宅不動産を引き継いで住む予定の法定相続人は誰もおらず、空き家になるという状態でした。
また、その空き家となる自宅不動産は、札幌市の住宅地のような換金性の高い場所に位置していないため、資産としてもだれも取得したがらないものでした。
そのような場合、不動産の処分について、
- 誰か一人が引き継ぐのか(単独所有)
- 皆で共有とするのか
- それとも別の方法(代償分割や、換価分割)をするのか
が問題となります。
幸い、被相続人の方には、預貯金が多くありましたので、預貯金でバランスを取る方法もとれるため、解決法には選択肢が多くありました。
分割方法(分け方)の選択肢
まず、前提として、遺産分割の方法に決まりはなく、法定相続分という民法の規定はありますが、法定相続人全員が合意すれば、大きく偏った分け方でも全く問題ありません。
次に、今回の被相続人と法定相続人の皆さまの構成には、
- ⅰ. 同居者や非常に関わりの深い方はいなかったこと
- ⅱ. 法定相続人同士はそれほど頻繁に会う仲ではなかった
- ⅲ. 法定相続人の中に、より関係性が疎遠である甥や姪が含まれている
- ⅳ. 法定相続人の住む地域がバラバラのため、一同が遺産の分割方法を話し合うことは現実的に不可能
という関係性があり、それらを総合的に検討すると、遺産の分割方法は、基本的に、法定相続分を強く意識した分け方で行った方が解決に至りやすいことを、相続人の代表者にお伝えしました。
法定相続分で分割するという方向性が決定したとしても、不動産の分け方には問題が残ります。
不動産の相続の仕方は、4つほどあります。
- ① 単独で一人の相続人が所有する。不動産は法定相続分に含めず、別物として相続する。(現物分割)
- ② 不動産の評価額を定め、不動産を取得する方がその分の財産を取得したことにし、他の相続人には、不動産の評価額分の代償金を定め分配する。(代償分割)
- ③ 一旦、不動産は共有にして、法定相続分について登記し、棚上げにしておく。(共有登記、いわゆる“とりあえず共有”)
- ④ 便宜的に、一旦、不動産を代表者一人に単独所有してもらい、その後、不動産業者を介して売却し、仲介手数料、建物解体費用を差し引いた残額を法定相続分で分ける。(換価分割)
遺産の中に不動産があり、空き家となるような場合、大きく分けてこのように4つの分け方があります。
今回の相続事案に対する分割方法の検討
上記①~④の分け方には、いずれもメリット・デメリットがありますが、相続の専門家の観点からは、③の“とりあえず共有”登記で解決というのだけは避けた方が賢明といえます。
③の方法は、一見、非常に平等性が高く、相続手続きを行う者(士業も含め)としては、相続登記が簡単にでき、スピーディーな解決方法として優れているといえます。
しかし、“とりあえず共有”といわれるように、問題をとりあえず棚に上げているだけの解決方法なので、最終解決の先延ばしになるだけだといえます。いずれ、自宅不動産が天災や劣化で半壊、倒壊した時などに大きな問題が生じます。
今回の事案では、法定相続人が7人のため、共有者が7人となります。共有物件を売るときは、7人全員が売主として関与しなければいけないこととなりますし、管理や費用負担を7人で行うことは現実的ではありません。
誰も手を付けない、手が付けられなくなる、その地域の“空き家問題”に発展する可能性が高いです。
そのため、③のとりあえず共有は、今回の相続事案ではじめに選択肢から外れました。
次に、②の代償分割ですが、今回のように後志地方にある地方都市だと、自宅土地建物を含めた売却額が200万円を下回ることが一般的であるため、代償分割をするにも売却額の予測が困難であることが多いです。
今回、仮に売りに出し、スーモなどで物件を見つけた方が、200万円位で購入を検討したとしても、古家の解体費用分の値引き交渉をされる可能性があるため、もっと低い金額で売却することになる可能性があります。
代償分割の方法は売却決定額が予想できない面があるため、今回は採用しないことといたしました。
次に、①の、預貯金は法定相続分で分けるとして、自宅不動産は、別物として一人が相続するという方法を検討しました。
この方法は、法定相続人に一人、信頼が高い人がいる場合には有効です。解決方法がシンプルで、最終解決もできるので適切だといえます。
しかし、不動産を所有する方が、全体として法定相続分より若干多く受け取ることになるので、法定相続人の関係性が疎遠である場合には、遺産分割協議書にサインしてくれない方が出てくる可能性があります。
そのため、今回の事案では、自宅不動産を預貯金とは別物として扱い、一人が自宅不動産を所有する方法は採用しないこととしました。
最後に、④換価分割の検討です。換価分割は、換価分割という名称のみが知識として普及していますが、実務の流れを知らない専門家も非常に多いです。
換価分割とは、不動産を売却して換価金を分配するというものですが、不動産売買の実務では、不動産の名義が亡くなった方のままでは取引対象とならないという、不動産売買の実務上の運用を知る必要があります。
そのため、不動産登記上、一旦、売主となる方を決定し、その方が便宜上単独所有する必要があります。
なお、例えば、法定相続人が2人で、2人が2分の1ずつ不動産を共有し、その後、売却換価するというのも換価分割の一種といえますが、一般的に換価分割とは、代表者一人が便宜上、単独所有し、その後、法定相続人全員のために売却し、換価(不動産を換金)することを指します。
今回の事案では換価分割が最適であったため、換価分割をすることにしました。
遺産分割協議書には
第1条 不動産をAが相続する。
第2条 (略)
第3条 第1条によってAが取得した不動産については、相続登記完了後、遅滞なく、売却換価し、売却にかかった諸費用を除く残額について、各相続人に法定相続分通りに、分配し、振込み又は現金にて支払うこととする。
という遺産分割協議内容を書いておけば、換価分割であることがわかります。
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たまき行政書士事務所の行政書士田巻が代表理事を務める、北海道相続出張サポートセンターのネットワークもありますので、ほぼすべての相続遺言にまつわる専門家をご紹介できます。
今回の事案でも、換価分割にあたり、適切に売却してくれる不動産業者さん、遺品整理業者さんを無償で紹介し、立ち合いをさせていただきました。
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