父が死亡。相続人が子供3人でそのうち一人が相続放棄をした事例
(相談者:札幌市清田区女性)

相続の解決事例

事案

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苫小牧市の自宅を所有する父が死亡して、父は一人暮らしだったため自宅は空き家となった。

空き家は売却して処分したいと思っているが、相続人3人のうち1人が相続放棄を検討していた

その後、相続放棄していたことがわかったが、相続放棄したことがわかる証明書をなかなかお送りいただけなかったケース

相続相談でのお話

故人が所有していた不動産は、故人の名義のままでは売ることができず、一旦、ご存命の相続人に名義を変更してからでないと売ることができないことを、初回の相続相談の際に、相続人全員の前でお話させていただきました。

初回相談の際に、相続人の方針としては、相続人の一人(年長者)が名義人となり売却するという方向性が決まりました。

ただ、故人は一人暮らしをしていたので、万が一借り入れなどが出てきた場合に心配だと、不安を拭いきれない相続人の方が一人いて、相続すべきか、相続放棄すべきか悩まれていました

結果的に、相続放棄したということでしたが、多忙なのか、その後、相続放棄をしたことの証明書(相続放棄申述受理証明書)をなかなかお送りいただけなかったので、手続きが中断しておりました

相続放棄した方がいるときの解決までの道のり

相続放棄したことの証明書とは

相続人の一人が相続放棄した場合、その方は、遺産分割協議書への署名押印、および印鑑登録証明書の添付は必要なくなります

もっとも、法務局としては、相続放棄したかどうかの証明がない限り、放棄した相続人の署名押印が無い遺産分割協議書は受付できないため、相続放棄したことがわかる証明書の準備が必要になります

この相続放棄したことがわかる証明書は、“相続放棄申述受理証明書”といいます。

相続放棄申述受理証明書を取得する方法

まずは、相続放棄したい相続人が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続放棄申述書を、必要な範囲の戸籍と共に提出します。

次に、相続放棄申述受理通知書という書面が家庭裁判所から送られてきます。その相続放棄申述受理通知書には事件番号が記載されています。

申請用紙に事件番号を記載し、150円分の収入印紙を添付して、家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書を請求します。ちなみに、事件番号は、相続放棄だと「令和3年(家)第〇〇〇〇号」というものです。

相続放棄申述受理証明書をなかなか送ってくれない場合の対処法

今回の事案のように、相続放棄が完了しているのに、いつまで経っても、相続放棄をした方が相続放棄申述受理証明書を送ってくれないケースがあります。なかなか送っていただけない理由としては、相続放棄した方にとっては、相続放棄の申述が受理された段階で、目的を達成している(相続放棄する行為は完結している)からです

しかし、相続放棄しない相続人は、手続き上、相続放棄した相続人が相続放棄をしたことを証明するために、“相続放棄申述受理証明書”が必要となります

そこで、相続放棄した方自身が、相続放棄したことがわかる証明書である相続放棄申述受理証明書を送ってくれない場合、他の相続人が自力で相続放棄申述受理証明書を取得することになります

やり方としては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続人の一人が行き、被相続人の相続人であることがわかる戸籍を持参します。

今回の解決事例でも、相続人の一人(自宅の名義人となる方)が、次の手順で相続放棄申述受理証明書を取得されました。

管轄の家庭裁判所に出向き、事件番号の確認の請求をいたしました。

事件番号が実際にありましたので、裁判所の職員さんから聞いた通りに、申請用紙に事件番号を記載し、150円分の収入印紙を貼り付けて相続放棄申述受理証明書の請求をしました。

裁判官の了解が得られて、即日、相続放棄した方の相続放棄申述受理証明書が発行されました。

相続放棄申述受理証明書が発行された後の手続き

遺産分割協議書には、相続放棄した方の署名押印は必要なくなります。そのため、今回の解決事例でいえば、相続人3人のうち2人が遺産分割協議書に署名押印をして、印鑑登録証明書と、相続放棄した方の証明として、先ほど解説した相続放棄申述受理証明書を添付して、法務局に申請します

今回、当事務所は提携する司法書士と連携し、相続登記を無事完了することができました。

参考:相続放棄した場合、相続税の基礎控除額に影響が出るか

今回の事例のように相続放棄した場合、相続税の基礎控除額に影響が出るか(相続税の基礎控除額が減額され、相続税がかかりやすくなるか)ご質問いただくことがあります。

結論としては、相続放棄した方がいても、相続税の基礎控除額に影響を与えることはありません

今回の解決事例ように、相続人3人の例で、相続人の一人が相続放棄したとしても、基礎控除額3000万円+相続人1人につき600万円×3人=4800万円が、相続税の基礎控除額となります。

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