相続において成年後見制度(法定後見)を利用するのはどのような場合ですか?

相続のよくあるご質問
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相続人様の中に例えば、強度の認知症の方、脳性麻痺など高度の障害がある方等がいるときに、成年後見制度が利用されます

具体的には、家庭裁判所が成年後見人(弁護士、司法書士等)を選任し、障害等のある相続人に代わり、成年後見人が遺産分割協議書に署名押印することになります。

ただし、現実には、成年後見制度を使うと自由な遺産分割協議ができなくなるので、注意が必要です。

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成年後見制度とは

成年後見制度とは、簡単に説明すると、障害等のある方を保護するために、家庭裁判所が成年後見人を選任する制度です

相続の場面に出てくる成年後見制度は、遺産分割協議に参加すべき相続人が、障害などで遺産分割協議に参加することが困難な状況のときに、障害などのある相続人(保護されるべき方を“成年被後見人”と呼びます)に代わって、成年後見人に遺産分割協議に参加してもらう制度のことをいいます。

成年後見人が選任されるまでの通常の流れ

障害等のある方の住所地を管轄する家庭裁判所に、成年後見人の選任申立て(成年後見人の候補者の申し立て)をします。

成年後見人を立てる趣旨は、成年被後見人の保護です。

法律専門職(弁護士、司法書士)が成年後見人となる場合と、障害等のある方の親族の方(障害等のある方の子供など)が選任される場合の二つのケースがあります。

親族等が成年後見人の選任申立てをした場合、成年後見人を監督する方(後見監督人)をつけるように、家庭裁判所から職権で指示されることもあります。

後見監督人は、家庭裁判所に報告、連絡などをすることがありますので、通常、弁護士や司法書士などの専門職の方がなることが多いです。

(成年後見人の選任)
第八百四十三条 家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。
 成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で、成年後見人を選任する。
 成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは成年後見人の請求により又は職権で、更に成年後見人を選任することができる。
 成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
(後見監督人の選任)
第八百四十九条 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被後見人、その親族若しくは後見人の請求により又は職権で、後見監督人を選任することができる。
(後見監督人の職務)
第八百五十一条 後見監督人の職務は、次のとおりとする。
 後見人の事務を監督すること。
 後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。
 急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。
 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。

民法

よりかみ砕いた成年後見制度の解説

かみ砕いて相続における成年後見制度の解説をすると、例えば、強度の認知症がある相続人の方が、誰の助けもないまま遺産分割協議に参加させられてしまうと、他の相続人の好き勝手に分け方を決められてしまい、場合によっては、取り分が0とされてしまう恐れがあります

そのため、家庭裁判所としては、成年被後見人(保護されるべき相続人)の利益を害さないように、適切に行動してくれる方をつけるという制度趣旨のもと、成年後見人を選任しています。

そのため、成年後見人は、原則として、少なくとも成年被後見人が相続によって得られる法定相続分を確保した遺産分割協議をする必要があります。

家庭裁判所のHPに詳しく、解説がありますので、併せて成年後見制度について確認すると良いでしょう。

成年後見制度を利用するデメリット

成年後見制度は、保護されるべき方(成年被後見人)の人権に配慮した重要な制度であることはいうまでもありません。しかし、相続の実務ではデメリットとなる点もあるので、あえてそれを3つ挙げたいと思います。

<デメリット1> 遺産分割の自由度がなくなる。

相続に限定していうと、遺産分割の際、本来、相続人の自由に決められるはずの協議で、法定相続分の確保を重視されてしまいます。このことが、実態にそぐわないこともあります。

例えば、長男は死亡した父の介護をしていて、母は中程度の認知症であったとします。長男は介護をしていたので、二男、長女からも信頼されており、母、長男、二男、長女全員が、父の財産をすべて長男に移転すべきと考えていたとします。

このような状況で、成年後見制度を利用しなかった場合には、自由に遺産分割をすることができたものが、成年後見制度を利用することによって家族の思い通りに分割できなくなるという恐れがあります

もちろん、判断能力が全くないような認知症の方は、成年後見制度を利用すべきですが、医学的な認知症=成年被後見人に該当するというわけではないので、認知症があるからといって無理に成年後見制度を利用すべきではありません

成年被後見人となるかならないかは、法律上の判断であり、認知症=成年被後見人に該当するわけではないため、注意が必要です。

<デメリット2> 金銭的負担が生涯かかる。

遺産分割協議の際に、成年後見制度を利用した場合、基本的には、ずっと成年被後見人、成年後見人の関係は続きます。

判断能力があるにもかかわらず、成年後見制度を利用してしまった場合、その後の生活が困難になったり(例えば、少額の契約もできなくなったり)、法律専門職(弁護士、司法書士)が成年後見人になった場合には、報酬を払い続けなければならないデメリットもあるので、成年後見制度を利用すべきかどうかは、慎重に判断する必要があります。

<デメリット3> 特別代理人などが出てくることがあり、制度が複雑である。

通常、成年後見人の候補者は、成年被後見人の子供や近しい親族が第一候補になるかと思います。

しかし、例えば、この図のような関係の場合には、成年被後見人と、成年後見人である長男が共同相続人の関係になります。

このような場合、妻(長男の母)と長男の利益が相反する関係(一方の取り分が多くなると、他方の取り分が少なくなる関係)となりますので、長男が母のために遺産分割協議をすることができません

この場合、どうするかというと、特別代理人という方を裁判所にさらに申請します。

そのため、成年被後見人と成年後見人が親と子のような関係の場合共同相続人となった相続事案について、遺産分割協議をするときには、かなり複雑になります

被後見人と成年後見人の利益が相反するような行為を行う場合には,どうしたらよいでしょうか

成年後見人は被後見人の財産を管理するために,財産行為に関する包括的な代理権を与えられています。
 しかし,成年後見人と被後見人の利益が相反する行為の場合には,公正な代理権の行使を期待することができないので,被後見人の利益を保護するため,法律上その行為についてのみ家庭裁判所の選任した特別代理人が代理権を行使することになっています。
 例えば,成年後見人と被後見人が共同相続人である場合の遺産分割や,成年後見人の債務を担保するために被後見人の不動産に抵当権を設定することは,成年後見人と被後見人の利益が相反する行為になりますから,特別代理人の選任が必要です。

裁判所のパンフレットの抜粋

デメリットのまとめ

相続において成年後見制度を利用するときは、法律専門職が成年後見人となると、毎月の費用がかかり、子供が成年後見人となる場合などには、遺産分割協議のときに成年後見人が署名押印することができず、特別代理人をつけなければならないなど、相続における成年後見制度は、金銭的、手続き的にデメリットがあるといわざるを得ない制度となっております

では、強度の認知症で明らかに判断能力がない場合はどうすべきか

この場合、遺産分割協議をして相続手続きをするときには、成年後見制度を利用すべきというのが本来の建前です

ただし、成年後見制度には、前述したデメリットも現実的にはあります。

そのため、以下のように成年後見制度を利用しないで数年後に、遺産分割協議をすることもあります。

事例

父が死亡し、母は、強度の認知症で、かつ、がんの末期で、余命が半年といわれている。その他の相続人は、長男、二男、長女という構成である。

長男、二男、長女は、母に精神的、肉体的負担をさせたくないと思っている。

解決方法

このような状況の場合、父の死亡後にすぐに遺産分割協議をせずに、半年後、あるいは数年後に母の死亡があった後に、遺産分割協議をするという方法があります。

そうすると、一度棚に上げていた父の遺産分割協議は、母の死亡後、判断能力のある者のみで行えることとなり、問題なく自由に遺産分割協議ができます。

具体的には、長男、二男、長女は、自分の地位に加えて、母の相続人という地位を兼任します

遺産分割協議書の署名押印欄の肩書には、【相続人、相続人兼被相続人〇〇〇〇(母の名前)の相続人】という形で載り、長男、二男、長女がそれぞれ署名押印すれば完了です。

不動産については、成年後見制度を利用することなく名義変更できる

不動産の相続登記は、預貯金の相続を原因とする解約と異なり、法定相続分通りの登記については、成年後見制度を利用することなく相続登記ができます

個別の状況を詳しく伺わないと一概には判断できないですが、総合的に判断し、実務では、不動産は法定相続分通りで相続登記をし、預貯金は一旦棚上げにして、障害などのある相続人が亡くなった後に、遺産分割協議をするという方法をとることもあります。

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