夫から相続した財産を夫の兄弟に残したいと相談されたケース
(相談者:90代女性)
遺言の解決事例
相談内容
相談者は3か月前に夫を亡くした妻でした。
「自分が夫の財産を全部相続したが、不動産は夫が先祖から代々受け継いだものであったので、不動産の分は夫の家系に返したい。」とのことでした。先日、夫の遺言により妻の自分が土地も相続したが、夫婦に子がいない自分が亡くなった場合、このままでは遺言を残さないと、相続した土地が自分の兄弟に渡ってしまうので、土地の分の財産は夫の家系の方々に返せるようにしたいとの意思でした。
問題点と解決方法
夫が先祖から引き継いだ土地を夫の家系に戻したいという相談は、よく受ける相談内容の一つです。そのようなお考えはとても素晴らしいと思います。
問題点は、土地は、名義上は分けることはできても、物理的に分けられないこと。土地の上に建物があり、その建物が使っていない建物のため、不動産を遺言により受遺者が取得することになっても逆に迷惑がかかる可能性があることです。
そこで、遺言者が死亡した後、不動産を売却できるよう遺言執行者を付けて、遺言執行者が不動産を売却し、現金化したものを夫の兄弟に均等配分するとの内容とすることで解決しました。
そして、このように不動産を夫の兄弟に分ける理由を、遺言の最後に“付言(ふげん)”として残し、本来の相続人となるべき遺言者の兄弟に配慮しました。
感想
遺言は、自分がいつ亡くなるかまだ分からないときに書くので、その後の遺言を残した方の生活なども十分配慮することが必要です。今回も遺言者のお気持ちと遺言者の生活の確保ができた遺言が作れましたので本当に良かったと思います。
相談者は遺言を作る際に非常に悩まれていましたので、相談から完成まで3か月くらいかかりましたが、遺言者が健康であればそのくらいかけてじっくり遺言を作るのも良いと思います。
夫婦に子がいない、かつ、両親が他界されている場合には、第三順位の相続人である兄弟に相続権が渡ることとなります。
兄弟に相続権が渡ると、遺産分割でなかなか合意が得られなくなると考えられます。
また、あくまで合意により決定する遺産分割協議での遺産分けは、一番遺産を譲り受けてほしい夫の兄弟に遺産が渡らないことも考えられます。
そのため、今回のようないわゆる兄弟姉妹相続の事例では、遺言書はできる限り作成した方が良く、その内容も、できる限り具体的に指定し、現実的な内容にする必要があります。
亡くなった方の兄弟には、遺留分減殺請求権という権利がありませんので、亡くなった方の兄弟からは遺留分を主張されることはありません。そのため、いわゆる兄弟姉妹相続となる事例の場合には、遺言を書くことが非常に効果的です。
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